自虐まじりの日本礼賛は、さまざまな分野に及ぶ。研究分野では〈多くのノーベル科学賞を受賞した日本が羨ましい一方、まだノーベル科学賞を受賞したことがない私たちの現実が惜しまれる〉と率直に日本に劣る現状を認め(「中道日報」)、スポーツではリオ五輪400mリレーで日本が銀メダルを獲得したことを〈金よりも羨ましい〉〈大規模な投資と体系的な訓練で世界の舞台に立った日本に比べ、韓国の発展速度は「亀」に近い〉(「THE FACT」)と反省する。
前出の韓国人ジャーナリストがその背景を語る。
「政治、経済、スポーツ、研究、文化、あらゆる面で長年にわたって韓国は日本に対抗意識を燃やし、メディアも『克日(日本に克つ)』を煽る報道を続けてきました。ところがいまや、率直に日本を褒める記事が書かれ、国民にも受け入れられてしまっている。いかに韓国人が自信を喪失しているかの現われだと思います」
韓国在住ジャーナリストの藤原修平氏は、そうした韓国国内の精神状況が日本への依存心を生んでいると指摘する。
「韓国では若者の失業率が異常に高く、さらに正社員と非正社員の賃金格差拡大が進んでいる。そんななかで日本では完全失業率が3%と21年ぶりの高水準だとか、首相が正社員と非正社員の賃金格差をなくすと言っている、といった報道に触れ、若者を中心に日本への憧れ、さらには苦しい韓国は日本に頼ろうという論調が生まれているのです。
かつて良好だった対中関係もぐらついてしまい、本当ならアメリカに頼りたいが、アメリカもトランプ大統領になってどうなるかわからない。それなら政治的に安定した日本に頼るしかない、というわけです」
日本人からすると、これまでさんざん日本を叩いてきたのに、困ったときだけ頼ろうとは都合が良すぎるのではないか、とも思ってしまうのだが、「本音は反日でも、困ると日本に頼ろうとするのは韓国の習性で、彼らにとっては矛盾でもなんでもない」(同前)のだという。
※週刊ポスト2016年12月16日号