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若き「島耕作」も学んだ裸踊りの宴会芸 著者は「半分実話」

著者・弘兼憲史氏が『課長島耕作』の神回を振り返る

「島耕作シリーズ」でサラリーマンの栄枯盛衰をリアルに描いた漫画家の弘兼憲史氏(69)。自身が松下電器産業(現・パナソニック)の新入社員時代、様々な「宴会芸」をやらされたと振り返る。

「当時はマイクやカラオケはなく、お座敷で日本酒を飲みながら、先輩から教え込まれた春歌を伴奏なしの手拍子で歌いました。“ひとつ出たほいのよさほいのほーい、ひとり娘とやるときにゃ……”と。下品だけど楽しかった。尿瓶に注がれたビールを一気飲みさせられたこともある。

 今の若者は引いてしまうだろうけど、昔は娯楽が少なく、みんな宴会芸を心待ちにしていた。どの会社にも森繁久彌主演の映画『社長シリーズ』で三木のり平が演じたような宴会部長がいて、多彩な芸で盛り上げていました」(弘兼氏 以下「 」内同)

『課長島耕作』の中で“神回”と評される第81話にも、味わい深い宴会芸が登場する。

 あるとき島は、宴席で取引相手から「裸踊り」を強要される。「冗談じゃない!! 何で俺がそこまで」と気色ばむ島の代わりに、上司の中沢部長は、「裸踊り? それ私の得意芸ですわ」とおどけ、手ぬぐいを頭に被せて全裸で“かっぽれ踊り”を披露する。

 お開きした後、「サラリーマン失格です。自分がいかに底の浅い人間か、思い知らされました」とうなだれる島に中沢部長は、自身も新人時代に宴席で相撲を取らされ、苦悩した話を打ち明ける。

 印象深い名シーンだが、弘兼氏は「これは半分実話です」と語る。

「松下の京都営業所にいた同僚が販売店との宴席でお座敷相撲を取らされた。パンツの上からふんどしを巻いて人前でまわし姿になり、三味線と太鼓に合わせて取り組んだ彼は一流大学の院卒のインテリで、その時『大学院での勉強は何だったんだ……』と思ったとこぼしていた」

 中沢部長から「サラリーマンの矜持」を学んだ島。

「あの宴席で、島耕作は会社という組織を学びました。正論ばかり主張しても大人の世界では通用しない。仕事を円滑に進めるには、“宴会芸なんてカッコ悪い”と拒んでいる場合じゃない。いつも真面目な中沢部長が取引先を満足させるため裸になって踊る姿を見て、島は自分がいかに甘かったかを思い知ります」

※週刊ポスト2016年12月16日号

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