コラム

森永卓郎氏 トランプ大統領がアベノミクスを破壊する

トランプ大統領誕生の日本経済への影響は(森永卓郎氏)

 米大統領選挙でドナルド・トランプ氏が勝利し、株式市場は「トランプ・バブル」に沸いているが、はたして日本経済はどんな影響を受けるのだろうか。経済アナリスト・森永卓郎氏が、トランプ大統領誕生が日本経済に及ぼす「負の影響」について解説する。

 * * *
 大方の予想を裏切り、11月には米大統領選でドナルド・トランプ氏が勝利を手にしました。ここしばらくの主要な選挙で、私の嫌いな人物や政党がことごとく勝利していたので、今回も嫌な予感がしていたのですが、まさにそれが現実になってしまいました。日本経済が暗雲に覆われるのは間違いありません。

 トランプ大統領誕生で日本経済が受ける影響は、主に3つあります。1つは安全保障。トランプ氏は、日本は米国の防衛力にタダ乗りしているという主張を繰り返してきました。日本は自力で防衛すべきとして、一時は日本の核保有を容認する発言までしていました。しかし、本音は次の発言にあると思います。

「もし日本が引き続き米国に守ってもらいたいなら、米国に対する負担を大幅に増やさなければならない」

 日本政府が自主防衛路線を採る可能性はほとんどないので、日本は少なくとも数千億円単位で負担を増やさなければならなくなるでしょう。それは、財政の大きな重荷になります。

 2つ目は、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)。トランプ氏はTPPに反対です。今のTPP合意は日本にとって不平等条約ともいえる非常に不利な内容で、トランプ氏がご破算にしてくれれば、日本経済にプラスのようにも見えます。しかし、トランプ氏の通商政策はそんな甘いものではありません。

 トランプ氏は、TPP合意というちゃぶ台を一度ひっくり返して、ゼロから、日本にとってはるかに厳しい要求を突きつけてくると思われるのです。これは、じわじわと日本経済の首を絞めていくことになるでしょう。

 3つ目の、そして最大の影響は、為替政策です。昨年の演説でトランプ氏はこういっている。

「日本の安倍首相は、(米国経済の)殺人者だが、ヤツは凄い。地獄の円安で、米国が日本と競争できないようにした」「キャタピラーがコマツより売れないのは、円安誘導のせいだ」

 為替レートを決める要因のひとつに、資金供給の比率があります。つまり、日本が金融緩和で資金供給を拡大すると、為替は円安に向かうということです。トランプ氏が批判しているのは、実はアベノミクスの金融緩和政策なのです。

 為替が1ドル=79円の超円高となり日本経済が危機に陥った民主党政権の末期に、私は民主党幹部に、「今すぐ大規模金融緩和をしないと日本経済が危ない」と進言しました。だが、その幹部は私にこういったのです。

「金融緩和なんて、米国が絶対認めるはずがないだろう」

 日本は米国のお許しがないと、金融緩和ができないのが現実です。だから、トランプ大統領の誕生で、日銀は追加の金融緩和を封じられてしまう。そうなったら、超円高が日本を襲い、製造業が次々に海外へ逃れ、製造業で働く派遣労働者が一斉に派遣切りにあうという、4年前の悪夢が再現されることになる。トランプ氏は、アベノミクスの破壊者となるのです。

マネーポスト2017年新春号

関連記事

トピックス

学習院初等科時代から山本さん(右)と共にチェロを演奏され来た(写真は2017年4月、東京・豊島区。写真/JMPA)
愛子さま、早逝の親友チェリストの「追悼コンサート」をご鑑賞 ステージには木村拓哉の長女Cocomiの姿
女性セブン
【中森明菜、期待高まる“地上波出演”】大ファン公言の有働由美子アナ、MC担当番組のために“直接オファー”も辞さない構え
【中森明菜、期待高まる“地上波出演”】大ファン公言の有働由美子アナ、MC担当番組のために“直接オファー”も辞さない構え
女性セブン
被害者の平澤俊乃さん、和久井学容疑者
《新宿タワマン刺殺》「シャンパン連発」上野のキャバクラで働いた被害女性、殺害の1か月前にSNSで意味深発言「今まで男もお金も私を幸せにしなかった」
NEWSポストセブン
NHK次期エースの林田アナ。離婚していたことがわかった
《NHK林田アナの離婚真相》「1泊2980円のネカフェに寝泊まり」元旦那のあだ名は「社長」理想とはかけ離れた夫婦生活「同僚の言葉に涙」
NEWSポストセブン
大谷翔平の妻・真美子さんを待つ“奥さま会”の習わし 食事会では“最も年俸が高い選手の妻”が全額支払い、夫の活躍による厳しいマウンティングも
大谷翔平の妻・真美子さんを待つ“奥さま会”の習わし 食事会では“最も年俸が高い選手の妻”が全額支払い、夫の活躍による厳しいマウンティングも
女性セブン
米国の大手法律事務所に勤務する小室圭氏
【突然の変節】小室圭さん、これまで拒んでいた記念撮影を「OKだよ」 日本人コミュニティーと距離を縮め始めた理由
女性セブン
広末涼子と鳥羽シェフ
【幸せオーラ満開の姿】広末涼子、交際は順調 鳥羽周作シェフの誕生日に子供たちと庶民派中華でパーティー
女性セブン
現役を引退した宇野昌磨、今年1月に現役引退した本田真凜(時事通信フォト)
《電撃引退のフィギュア宇野昌磨》本田真凜との結婚より優先した「2年後の人生設計」設立した個人事務所が定めた意外な方針
NEWSポストセブン
林田理沙アナ。離婚していたことがわかった(NHK公式HPより)
「ホテルやネカフェを転々」NHK・林田理沙アナ、一般男性と離婚していた「局内でも心配の声あがる」
NEWSポストセブン
世紀の婚約発表会見は東京プリンスホテルで行われた
山口百恵さんが結婚時に意見を求めた“思い出の神社”が売りに出されていた、コロナ禍で参拝客激減 アン・ルイスの紹介でキャンディーズも解散前に相談
女性セブン
猛追するブチギレ男性店員を止める女性スタッフ
《逆カスハラ》「おい、表出ろ!」マクドナルド柏店のブチギレ男性店員はマネージャー「ヤバいのがいると言われていた」騒動の一部始終
NEWSポストセブン
殺人未遂の現行犯で逮捕された和久井学容疑者(51)。ストーカー規制法違反容疑の前科もあるという
《新宿タワマン刺殺事件》「助けて!」18階まで届いた女性の叫び声「カネ返せ、カネの問題だろ」無慈悲に刺し続けたストーカー男は愛車1500万円以上を売却していた
NEWSポストセブン