●セリフに潜むネガティブ
演出の他にも「暗さ」の要因があります。例えば時々、グサっと胸に刺さるような否定的なセリフが出てくること。
「子供を産んだことがない人には、わからないのよ!」と、独身の明美に向かって言い放つ良子。「縫製の一工程二工程減らしても、品質は変わらんでしょ?」と、高級百貨店の担当者が下請け業者を見下すように、上から目線で断定。
「何の計算もせんとそんな簡単に、全部自分らだけでやれると思うてるのか?」「男のわしらが手綱を引かな!」と、男VS女という対立の構図をあおるキツイ言葉。こうした強烈ネガティブセリフに、引いてしまうのは私だけでしょうか?
●物語の終わり方に原因がある?
さらにもう一つ、「構造的な要因」があることに気付きました。それは、終わり方、です。例えば今週月曜日の回は、怖い顔で怒る君枝の義母のシーンで終わりました。
「やめてちょうだい! 2階で裁縫をするなんて聞いてへん!」
まさに鬼の形相で言い放ったところで幕。翌日の火曜日は、良子が子供を上手く叱ることができない、と悩み落ち込むシーンで終わる。つまり、15分間のエンディングで暗いケースがしばしば。だから余韻もダークになり視聴者も暗い印象を引きずってしまう。
つまり、「演出」「セリフ」「構成」のトリプルパンチで「暗さ」が際立っているのです。ところが制作統括のインタビュー記事には「第9週放送を境にこれまでの物語と雰囲気が明るく変わっていく」(『ザテレビジョン』2016年12月3日)。もしかしたら、敢えて前半を「暗く重たく」することによって、後の「明るさ」を際立たせよう、という手の込んだ戦略でしょうか?
たしかに今週の後半では「キアリス」の商品が大急百貨店で販売され始め、明るい兆しも見えてきました。今後、「暗いトーン」を脱して、スカッと爽快さを感じさせてくれる朝ドラに向かって離陸できるのか。注目したいと思います。毎日やってくる朝に、過度な「暗さ」は似合わないから。