ライブハウスといえば、かつてはみずから楽器を演奏するバンドマンでなければ立ち入れない場所でした。いま、ライブハウスでもっとも活躍しているのは、アイドルかもしれません。昔に比べて小さなハコが増えたライブハウスの世界に、アイドルが進出したことで色々と変わってきているようです。ライブハウスの世界で起きているアイドルブームについて、地下アイドルでライターの姫乃たまさんがリポートします。
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アイドルとメタルの融合を掲げて活動している3人組の女の子「BABY METAL」が、今年も世界中で大活躍しました。全米総合チャートにランクインしたり、8カ国でワールドツアーを行なったり、日本を飛び越えた活動は、成功というより変革と呼んだ方が正しいかもしれません。この変革は、演奏技術が重視されるメタルという音楽ジャンルに対して、アイドル性という不明確な魅力を混ぜたことによって起こったと考えられます。
日本では、今年も各地のライブハウスで、日夜アイドルイベントが開催されていました。かつてのライブハウスといえば、みずから楽器を演奏するバンドマンたちの世界でした。ところがいま、ライブハウスの世界ではアイドルブームが起きています。
しかしほんの数年前までのライブハウスには、アイドルが出演するだけでも難しいことでした。以前のライブハウスには楽器を持たない人を出演させない風潮があり、カラオケに合わせて歌うアイドルが出演するのはもってのほかだったのです。
私が地下アイドルとして活動を始めた2009年頃も、まだ出演できるライブハウスが少なく、今よりもずっとスタッフさん達が厳しかったのを覚えています。なかには、やる気がない様子を隠さず、本番での音調整をわざと間違えられたこともありました。でも最近では、そんな体験をすることは、まずありません。
振り返るとここ数年は、アイドルにとって活動範囲の広がった期間である一方、ライブハウスにとっては楽器を持たないアイドルが参入してきたことで意識の上でも、プログラムを組む上でも変革が起きた期間だったようです。
2016年11月29日、下北沢のライブハウス「ろくでもない夜」で、店長の原口雄介さんが、四谷アウトブレイクの店長である佐藤学さんを招いてトークショーを開催しました。ふたりは現在のライブハウスシーンについて、「とても盛り上がっている」と口を揃えます。
この日、原口さんはライブハウス発の五人組アイドルグループ「ろくでもない女」を披露し、武道館への出演を目指して活動するという、ろくでもなさのない目標を発表しました。
原口さんはアイドルグループを結成した理由について、「ライブハウスも面白いことを仕掛けていかないと生き残れない」と話し、それを受けて佐藤学さんは、「最近のアイドルは下手したらパンクバンドよりもパンクな時がある。自分をいかに売り込むかが大事なので、ライブでもトークでも全力でやってくるし、ライブハウスもその面白さに気づき始めています」と話しました。