伊藤忠商事を商社トップに押し上げた岡藤正広社長
「今年9月に長らく悲願だったユニーグループとの統合を実現させたファミリーマート元会長(現ユニー・ファミリーマートホールディングス社長)の上田準二氏の経営手腕は光りました。ファミマとユニー傘下のサークルKサンクスのコンビニ合併により、トップのセブンイレブンに匹敵する規模に押し上げましたからね。
そもそも上田氏はファミマの筆頭株主である伊藤忠商事出身でありながら、商社マンとは思えぬほどドブ板営業に奔走したり、地方のフランチャイズオーナーと膝詰め談判をしたりして人望の厚い経営者。
かつて、自らプロデュースして販売した弁当『社長のごはん』『会長のごはん』の復活を望む声が今もなくならないのは、上田氏の人柄によるところが大きいでしょう」
伊藤忠といえば、本体の躍進ぶりも目覚ましい。2016年3月期に財閥系の名だたる大手商社を差し置いて純利益でトップに躍り出たのは、岡藤正広社長の思い切った改革が奏功した証だ。
「岡藤氏は商社の中枢ともいえる資源分野に頼らず、生活消費関連分野を深堀りして業績アップに結び付けました。高級ブランド『アルマーニ』や『セリーヌ』の販売権を獲得したり、米青果物大手のドールを買収したりと、腹の座った経営スタイルが他の商社トップよりも抜きに出ています。
しかし、やみくもに事業の幅を広げているわけではありません。豪放磊落でありながらも緻密な計算のできる経営者という印象を受けます」(前出・河野氏)
こうしてみると、キラリと光る名経営者の条件は、先見の明をもちながら、いかに人並み外れた行動力に移せるか──にあるようだ。河野氏もいう。
「近年は鳴り物入りでトップに請われ、大きなアドバルーンを打ち上げる“プロ経営者”が持て囃されてきましたが、いくら華やかでカリスマ性があっても口先ばかりで実行力が伴わなければ名経営者とはいえません」
さて、今年の社長に選ばれたトップたちは、言行一致の経営スタイルをどこまで貫くことができるか。
●写真提供/月刊BOSS