国際情報

上海に設置された慰安婦像と開館した「慰安婦」歴史博物館を訪ねた

上海師範大学内に設置された慰安婦像

 10月22日、上海に慰安婦像が設置された。中韓の芸術家らが寄贈したものだ。同日、「中国“慰安婦”歴史博物館」も開館した。慰安婦問題を終わらせない“中韓共闘”の現場をジャーナリストの西谷格氏が訪れた。

 * * *
 上海市の中心部から真新しい地下鉄に乗って約15分、周囲を住宅や公園に囲まれた上海師範大学のキャンパス内に足を踏み入れ、目指す銅像を探した。少し歩くと、手入れされた芝生の先に、ブロンズ像の少女の姿が見えた。

 近づいて観察してみる。チマ・チョゴリを着用したおかっぱ頭の少女と、チャイナ服のような漢服に身を包んだ少女が二人、姉妹のように並んで椅子に腰掛け、険しい表情でまっすぐ前を見つめている。古風な顔立ちの“朝鮮人慰安婦”に対し、“中国人慰安婦”はぱっちり二重の今風の美少女。ひざの上には花束が置かれ、像は静かに佇んでいた。

 しばらくすると、学生と思しき男性2人が像の前に現れた。耳をそば立てて話し声を聞くと、韓国語をしゃべっている。2人は像の足元にある石板に目を落とし、その内容を読み上げた。石板には中国語、英語、韓国語、そして日本語の4か国語でメッセージが書かれている。

「『慰安婦』制度とは、1932年から1945年の間、日本政府が日本軍に軍事的性奴隷を配置することである」

 という書き出しから始まる説明文は、

「加害者からの謝罪及び弁償が無かった被害者たちを慰めるために、ここに中国と韓国の『慰安婦』平和少女像を設立する」

 との文言で締めくくられている。

 男性2人は苦々しそうに韓国語と英語で声に出して朗読すると、1人がおもむろに像の前に立って両手を組み、頭を垂れた。黙祷しているのだ。

 像の裏側に回り込むと、もう一つ小さな石板を発見した。

「We can forgive, but we can never forget」

 我々は許すことはできるが、決して忘れることはできない。本当に許す気があるのだろうか、などと思ってしまうのは邪推だろうか。

関連キーワード

関連記事

トピックス

11月16日にチャリティーイベントを開催した前田健太投手(Instagramより)
《いろんな裏切りもありました…》前田健太投手の妻・早穂夫人が明かした「交渉に同席」、氷室京介、B’z松本孝弘の妻との華麗なる交友関係
NEWSポストセブン
役者でタレントの山口良一さんが今も築地本願寺を訪れる理由とは…?(事務所提供)
《笑福亭笑瓶さんの月命日に今も必ず墓参り》俳優・山口良一(70)が2年半、毎月22日に築地本願寺で眠る亡き親友に手を合わせる理由
NEWSポストセブン
高市早苗氏が首相に就任してから1ヶ月が経過した(時事通信フォト)
高市早苗首相への“女性からの厳しい指摘”に「女性の敵は女性なのか」の議論勃発 日本社会に色濃く残る男尊女卑の風潮が“女性同士の攻撃”に拍車をかける現実
女性セブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《1日で1000人以上と関係を持った》金髪美女インフルエンサーが予告した過激ファンサービス… “唾液の入った大量の小瓶”を配るプランも【オーストラリアで抗議活動】
NEWSポストセブン
日本全国でこれまでにない勢いでクマの出没が増えている
《猟友会にも寄せられるクレーム》罠にかかった凶暴なクマの映像に「歯や爪が悪くなってかわいそう」と…クレームに悩む高齢ベテランハンターの“嘆き”とは
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
六代目山口組が住吉会最高幹部との盃を「突然中止」か…暴力団や警察関係者に緊張が走った竹内照明若頭の不可解な「2度の稲川会電撃訪問」
NEWSポストセブン
浅香光代さんと内縁の夫・世志凡太氏
《訃報》コメディアン・世志凡太さん逝去、音楽プロデューサーとして「フィンガー5」を世に送り出し…直近で明かしていた現在の生活「周囲は“浅香光代さんの夫”と認識しています」
NEWSポストセブン
警視庁赤坂署に入る大津陽一郎容疑者(共同通信)
《赤坂・ライブハウス刺傷で現役自衛官逮捕》「妻子を隠して被害女性と“不倫”」「別れたがトラブルない」“チャリ20キロ爆走男” 大津陽一郎容疑者の呆れた供述とあまりに高い計画性
NEWSポストセブン
無銭飲食を繰り返したとして逮捕された台湾出身のインフルエンサーペイ・チャン(34)(Instagramより)
《支払いの代わりに性的サービスを提案》米・美しすぎる台湾出身の“食い逃げ犯”、高級店で無銭飲食を繰り返す 「美食家インフルエンサー」の“手口”【1か月で5回の逮捕】
NEWSポストセブン
温泉モデルとして混浴温泉を推しているしずかちゃん(左はイメージ/Getty Images)
「自然の一部になれる」温泉モデル・しずかちゃんが“混浴温泉”を残すべく活動を続ける理由「最初はカップルや夫婦で行くことをオススメします」
NEWSポストセブン
宮城県栗原市でクマと戦い生き残った秋田犬「テツ」(左の写真はサンプルです)
《熊と戦った秋田犬の壮絶な闘い》「愛犬が背中からダラダラと流血…」飼い主が語る緊迫の瞬間「扉を開けるとクマが1秒でこちらに飛びかかってきた」
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン