糖尿病、高コレステロール、脳梗塞、痛風。これらの生活習慣病にかかわる薬を「飲み続けてはいけない」と過去に報じた『週刊現代』の主要な論拠は、薬の「副作用」が患者に重大な影響を及ぼすため、服用を止めるべきだというもの。
果たして、本当にそうか。本誌も医師・薬剤師に見解を聞いた。五本木クリニックの桑満おさむ院長は、「薬に副作用があるのは当たり前。どれも処方にあたって医師が注意するものが多く、患者の判断で薬を止めるのは危険です」と主張する。具体的に見ていこう。
■高脂血症、高コレステロール血症
クレストール、リピトールなど「スタチン系」と呼ばれる高コレステロール薬は、肝臓でコレステロールが合成される際に発生する酵素の働きを阻害する。高脂血症の患者に多く処方され、動脈硬化から発生する心筋梗塞や脳血管障害のリスクを抑制する効果がある。
記事ではスタチン系の薬について、「効果が怪しく飲む必要はない」と提言したが、医薬情報研究所取締役で薬剤師の堀美智子氏は効果はあると指摘する。
「コレステロール値が高いと動脈硬化が進行するリスクがあり、『薬で値を下げるべきだ』という様々なデータがあります。特に家族性高コレステロール血症の患者は遺伝的に値が高くなるため、急に服用をやめると体内に問題が生じます」
副作用はどうか。『週刊現代』では、スタチン系のリバロを1日1錠、5日間飲んだ80歳男性のケースを紹介。太ももに激痛が走り、その後、ふくらはぎ、肩、臀部などに激痛が広がったとして、薬の副作用で筋肉が溶ける「横紋筋融解症」の可能性が高いと報じた。わずか5錠で生じたとされる副作用だが、桑満院長は「重症化はまれ」と否定的だ。
「横紋筋融解症は多くの薬に生じる副作用であり、スタチン系に限りません。発症すると細胞に含まれる酵素が血液中に溶けだしますが、現実的には軽い筋肉痛になる程度です。念のため副作用が出たらすぐ医師に相談してほしいが、大騒ぎをする必要はほとんどの場合ありません」(桑満氏)
■脳梗塞
脳梗塞の予防効果があるプラビックスは血液を固まりにくくする「抗血栓薬」だ。〈日本で最も売れている薬〉だが、これも〈予防効果がきちんと確認されていない〉と報じられた。堀氏は抗血栓薬の服用には注意が必要としたうえで、その予防効果を認めている。
「プラビックスはそれまでの薬の副作用を改善した新しい薬で、薬剤として優位性があるから承認され発売が認められました。当然、予防効果も確認されています。ただし、血栓を防ぐために血を固まりにくくする薬なので、服用すると出血しやすくなる。手術や抜歯の予定がある人は、事前に医師に報告してください」(堀氏)
※週刊ポスト2017年1月1・6日号