オーブンやホームベーカリーがなくてもパンが焼ける、南部鉄器のパン焼器「タミパンクラシック」(8640円)が話題になっている。名前の由来はタミさんこと、現在102才の近江タミ子さん。彼女は、製造元である「及源鋳造」(岩手県奥州市)社長・及川久仁子さんの祖母にあたる。
終戦直後で食糧難が続く中、宮城県でジュラルミン製のパン焼器を手に入れたタミさんは、アメリカから救援物資として届く小麦粉でパンを焼き、子供たちを喜ばせていた。その後、タミさんの長女が南部鉄器の老舗「及源鋳造」に嫁ぎ、その娘の久仁子さんが家業を継いで、現在に至る。
「1996年のある時、戦後の日々を懐かしく思い出した祖母が、以前使っていたジュラルミン製のパン焼器を探し出し、私たちにパンを焼いてくれました。その時、『南部鉄器で作れないの?』という話が出ました。以来、南部鉄器の良さを生かしたパン焼器をどう作ったらいいか試行錯誤。祖母のパン焼器をモデルに、『タミさんのパン焼器』を開発しました」(久仁子さん・以下「」内同)
特筆すべきは、中央に鍋の煙突部を設けたことだ。
「煙突があることで熱の対流が起こり、中央からも熱を伝えることができます。南部鉄器の特長である高い蓄熱性も加わり、加熱ムラがなくパンが焼き上がります。さらに、重い鉄のふたが水分を閉じ込めるため、蒸し器で蒸したようにふっくら焼き上がります」
シンプルなパンなら発酵させたパン生地を弱火で20分焼き、ふたをしたまま裏返し、さらに5分焼くだけだ。
今回紹介している「タミパンクラシック」は2014年、タミさんの100才を記念し、改良された進化系モデル。外はこんがり、中はしっとり&ふんわりしたパンができると好評で、ロングセラーになっている。
※女性セブン2017年1月5・12日号