16歳の時に漫才の初舞台を踏んで、戦時中は兵隊さんの慰問にも行きました。夜は部隊長の横で雑魚寝してね。ようするにその時代、時代を精一杯に生きてきた。(三味線を見せながら)この三味線は好江ちゃんとコンビを組んだ時に200円で買ったものなんです。

「内海桂子・好江」で48年間。最初に出会った時、好江ちゃんはまだ14歳で、三味線もしゃべりもゼロから教えました。好江ちゃんは「お姉さんの死に水は私が取るわ」といいながら、先に61歳の若さで逝っちゃった。この話だって、舞台でネタになるんだから、この歳になるとなんでもありなんですよ。

 寂しいのは、昔は同世代の芸人さんがたくさんいたけど、今は辞めちゃったり死んじゃったりで、話す相手がいないことね。私は心臓がちょっと不安な以外は、悪いところはなにもありません。

 食べ物はなんでもいただいて、肉も大好きですよ。入れ歯は4本だけで、あとは自分の歯ですから。1日3食で、夜は必ず晩酌がつく。私が日本酒好きだからいろんな方が越乃寒梅だとかを樽で送ってくださるんだけど、この人(1999年に結婚した、24歳年下の夫でマネージャーの成田常也氏)が1合しかつけてくれないのよ。

 それにしても金儲けしようとしてないのに三食食べられているのはなんでなのかなと思いますよ。私は毎日でも舞台に出たいけど、この人が月8回と決めている。まあ、今楽ができるくらい昔苦労したということなんでしょうかね。

 私はなにもしなくて、この人が食事も全部作ってくれる。今の心配は、この人が先に逝っちゃわないか、ということぐらいだわね(笑い)。

●うつみ・けいこ/千葉県銚子市生まれ。尋常小学校3年時に神田錦町の蕎麦屋「更科」に奉公に出される。1950年に内海好江とコンビ結成。1989年に紫綬褒章、1995年に勲四等宝冠章受章。2007年より漫才協会名誉会長。

※週刊ポスト2017年1月13・20日号

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