現在、日本の65歳以上の高齢者は約3393万人、高齢化率(人口に占める高齢者の割合)は約27%と過去最高になった(2015年国勢調査)。少数の現役世代が多くの高齢者を支え、年金財政は危機に瀕し、医療費も年々増大の一途だ。
そこで高齢者の定義を見直し、65~74歳の約1752万人を「高齢者」から外せば、高齢化率は一気に約13%へと半分に減る。まさに数字のマジックである。その上で「まだまだお若い」と74歳まで働くようにすれば高齢化に伴う財政コストを大きく減らせるうえに、“現役”の増加で税収アップまで可能になる。
現在の法令では、65~74歳が「前期高齢者」、75歳以上を「後期高齢者」と定めている。生物学的に日本人が平均5~10歳若返っているとしても、高齢者の定義をいきなり10歳引き上げるのは乱暴すぎる。
寿命制御遺伝子やアルツハイマー病などの研究でノバルティス老年医学賞を受賞した白澤卓二・白澤抗加齢医学研究所所長が語る。
「今回の高齢者の定義見直しは政治的な背景を意識した提案と考えていい。今後高齢者の医療費や介護費用が増えていく一方で、支え手となる生産年齢人口は減っていく。このままでは社会・経済的に成り立たなくなるだろうから、高齢者の定義を見直すというのが学会の議論のスタートだったはず。学会は財政上の理由とは言いにくいでしょうが、そう理解していい」
今回の提言は“国策”に沿った動きだという指摘である。
※週刊ポスト2017年1月27日号