トリを務めたのは、上海から来た中国“慰安婦”歴史博物館の館長、蘇智良氏。同博物館は、中国初の慰安婦像が設置された上海師範大学内の施設だ。唯一の男性登壇者で、歴史学者の肩書が説得力を高めている。
「世界の文明史上、このように国家権力によって女性の人権を侵害する大規模な性奴隷制度は非常に稀で、もはや空前絶後と言えるでしょう」
「日本軍は現地の女性を捕まえて、自分たちの性奴隷にしたのです」
このように蘇氏は、日本軍がいかに邪悪だったかと繰り返し強調しながら、中国に存在する4か所の慰安婦博物館について仔細に説明した。
最後に台湾の代表者が「日本人の憎らしいところは、世界に対して科学や医学など多くの貢献をしているのに、普遍的価値観に対してあまりにも貢献が少ないところ」と悔しそうに訴えた。
イベント終了後、台湾の参加者の20代女性に声を掛け、感想を聞いてみた。すると「うーん、何とも言えないなあ。歴史の名残を感じるけど……」と歯切れが悪い。
敢えて「日本政府に対して反感を抱かない?」と水を向けた。中国であれば99%、「日本国民は嫌いじゃないが、日本政府には反感を覚える」と答える場面だ。だがここでも「特に感じない。この問題はこの問題として分けて考えている」と大人の対応だった。
台湾では慰安婦問題はまだまだ認知度が低く、博物館側が「慰安婦は強制連行された性奴隷」、「日本は正式な謝罪を一切していない」と訴えれば、多くの人はその言葉通りに受け止める。事実と異なる“偽りの歴史”が拡散すれば、将来の日台関係にも影を落とすことになりかねない。
※SAPIO2017年2月号