◆蓮舫と野田は風を逆利用
解散を煽っているのは自民党だけでない。公明党の山口那津男代表は党本部の仕事始めで「常在戦場で臨まなければならない」と檄を飛ばすなど、解散待望の姿勢だ。
今年夏には公明党・創価学会が力を入れる東京都議選が控えている。小池百合子・都知事率いる「小池新党」のファクターによって大きく左右されるため、選挙戦術上、総選挙と都議選の日程が近づき過ぎないようにしたい事情がある。さらに大きいのは、来年1月2日に池田大作・創価学会名誉会長が90歳の誕生日を迎え、祝賀行事が計画されているとみられることだ。
「選挙が年末まで延びて、万が一、池田名誉会長の生誕祭直前に公明党が議席を減らす事態になれば、執行部の責任が問われる。だから早めに選挙をやってほしいわけです」(古参会員)
野党の民進党でも、蓮舫・代表は昨年暮れから「1月解散になる」と言い、野田佳彦・幹事長も「通常国会の早い段階の解散」に言及し、解散風を吹かせている。だが、事情は安倍首相とは正反対。民進党の反主流派議員が皮肉たっぷりに明かす。
「蓮舫も野田も今や党内の求心力は全くない。彼らが解散、解散と騒ぐのは、反執行部派への“批判すれば公認しないし、選挙費用も面倒見ないぞ”という脅し。選挙に負けたら即、蓮舫下ろしが始まるから、本当は解散が恐いはずだ」
こちらも自分たちのことしか頭にない。湯淺墾道・情報セキュリティ大学院大学教授(政治制度論)が国民無視の解散狂騒曲をぶった切る。
「衆院解散は本来、行政府と議会が国政の重要課題で対立し、抜き差しならない状況に陥ったときに行なわれる。そのために憲法では、議会に内閣不信任案という刀を与え、行政府の長の総理に国民の信を問うための解散権を与えている。しかし、現在の国会にそんな重要な政策対立など起きていない。一体、何のための解散で、国民に何を問うのか。新聞もその点を論じるべきでしょう」
何のために解散するのか。その答えは安倍首相も、右往左往する面々も、誰も口にしない。
※週刊ポスト2017年1月27日号