昨年は大河ドラマ『真田丸』に出演した。舞台、テレビ、映画と作品を重ね、俳優としての地位を築き上げてきた西村だが、「そんなもの、今でもあると思っていません」と決して驕らない。
「時々、人に芝居を教えている自分に“お前は、何様なの?”と思いますよ。僕は決して、上手な役者でも俳優でもありません。
現役の俳優が芝居を語ることへの批判も、常に覚悟しているし、恐怖心もある。だけど、市民と関わる活動はライフワークとしてこれからもずっと続けていきたい。恐怖心を克服すれば、人に喜んでもらえるし、その先にちょっとした達成感を感じられる。最近になってようやく、それが自分の力にもなるとわかってきました」
俳優活動も忙しい。2月には舞台『COASTER2017』が控え、5月に山田洋次監督『家族はつらいよ2』が公開される。
「最近は、映画が好きですね。現場にもよりますが、映画のほうが創造の現場に身を置いていると感じることが多いんです。上手く表現できないけれど、舞台ともまた違った“物作り”を感じます」
役者のスイッチが入ると、西村は独特の空気を醸し出す。だが、稽古を終えて立ち寄った居酒屋では、焼酎を片手に飾らない素顔を見せる。それもまた、西村の魅力だ。
「若い頃より飲む量は減りました。昔のように毎晩深夜まで飲んでいたら、体力が持ちませんよ(笑い)。趣味は散歩。思い立ったら、昼夜問わずに一人で何時間も歩きます。お腹が空いたら途中でパンを買ったり、コーヒーを飲んだりしてね」
取材中に西村は何度も「教えているだけではなく、僕も皆さんから元気をもらっている」と感謝の気持ちを口にした。こうして繋がる人の縁が、さらに西村の力となっていくのだろう。
●にしむら・まさひこ/1960年生まれ。富山県出身。1994年、三谷幸喜脚本のドラマ『古畑任三郎』シリーズ(フジテレビ系)で脚光を浴びる。1997年、映画『ラヂオの時間』で日本アカデミー賞最優秀助演男優賞を受賞。同作と『マルタイの女』で、キネマ旬報賞助演男優賞、ブルーリボン賞助演男優賞、報知映画賞助演男優賞、日刊スポーツ映画大賞助演男優賞を受賞。2016年はNHK大河ドラマ『真田丸』ほか、映画『家族はつらいよ』『超高速!参勤交代リターンズ』等に出演。2012年から石川、富山、福岡、長野、山形、千葉などで演劇初心者向けのワークショップを開催。演劇で地域の活性化に取り組む。DVDブック『西村雅彦の俳優入門 1カ月で効果が出るセリフのメソッド』(飛鳥新社刊)も発売中。
撮影■江森康之 取材・文■戸田梨恵
※週刊ポスト2017年1月27日号