しかし、同筋は「元党政治局常務委員の周永康らはすでに刑に服しているが、王岐山が政協で改めて党中央に反旗を翻す野心家、陰謀家の暗躍に触れていることから、周永康らとは別の新たな反逆者に照準を絞っていることを示している」と指摘する。
今年の秋にはとくに、5年に1度の党大会の開催が決まっている。習近平は10月の中央委総会で「習近平同志を核心とする党中央」と、自身を「党の核心」的地位に押し上げており、党最高指導部人事を優位に進めるために、反腐敗闘争を中心に政敵をなぎ倒したいところ。
前号でもレポートしたように、自身の最高指導者としての3選に道を開くべく、これまでかつての最高実力者、鄧小平ですら成し遂げられなかった党の人事制度すら変えてしまうための布石を打っておくためだ。
前出の党幹部筋が明らかにしたところでは、そのために習近平が用意しているのが米大統領制を参考にした「総統制」である。これまで歴代の党総書記は失脚した胡耀邦や趙紫陽を除いて、江沢民、胡錦濤の2人とも正式には2期10年務めている。3期15年務めた例はない。江沢民が党中央軍事委主席を2年延長した例があるが、これは軍事委主席の任期が明文化されていないためだ。
これと同じように、党総書記の任期は、実は明文化されていない。それでは、なぜ2期なのかというと、兼務する国家主席の任期が「2期10年」と憲法で規定されているためで、自然に党総書記の任期も2期で打ち切りになってしまったようだ。だが、江沢民が党中央軍事委主席を3期続けようとすれば、それもできたのだが、なぜ2年延長しただけで辞任したのかは、党長老らが江沢民の居座りをこぞって反対したためだ。
しかし、毛沢東は死ぬまで軍事委主席の座を渡さなかった。習近平の狙いは毛沢東の再来だ。
同筋が明かしたところでは、習近平は党総書記3選を反対されないために、国家主席を廃止し、「総統」職を新たに導入する案を練っている。
党幹部筋は「総統選導入の場合、国家主席を廃止するなど憲法の条文改正が必要となるが、すでに習主席はその前段となる改革に着手している」と明かす。それが非共産党員でも軍や政府の高級幹部に登用できるという制度だ。
さらに、国家副主席を現在の1人から2人にし、そのうちの1人は非党員にするという案まで考えているという。