国内

安倍首相の「大喪の礼」への解釈に宮内庁関係者違和感

この10年、意見の食い違いを見せてきた天皇陛下と安倍首相

 1月23日に公表された論点整理を基に、議論が大詰めを迎えている天皇陛下の生前退位。陛下が皇室典範改正も含めた恒久的な制度設計を望まれている一方で、安倍晋三首相(62才)を中心とした官邸側は「1代限り」の方向で議論をリードしている。生前退位の方針が決まる特例法案の国会提出は5月上旬の見込みだ。猶予はわずか3か月弱。陛下の悲願は瀬戸際にある。

 昨年末にはこんなことがあった。学習院のOBに配布される『桜友会報』が、昨年9月に行われた渡辺允元侍従長の講演録を掲載。その中で、実際には話していたある重要な発言が削除されていた。

「渡辺氏は、陛下の生前退位の意向をお知りになった美智子さまが、当初は慎重な姿勢を見せられていたと明かしました。その後、美智子さまも陛下の深いお考えと強いお気持ちに接して同調された。発言を削除した理由は、両陛下が最初から一枚岩だったと印象づけるためでしょう」(学習院関係者)

 ところが、安倍首相の考えは冷ややかだ。

「恒久的な制度設計には皇室典範の改正が不可欠ですが、議論が長期化するのは明らかです。持論である憲法改正に着手したい安倍首相にとって、そんな時間はないから特例法で済ませたいというのが本音なんです」(政治ジャーナリスト)

 さらに最近、安倍首相は周囲にこう漏らしているという。

「『大喪の礼』は、なくしてはいけない伝統行事だ」

 大喪の礼とは天皇が崩御した際に行われる葬儀のこと。もし天皇が生前退位すれば、自ずと大喪の礼は行われない。

 陛下にとって、大喪の礼の煩わしさを避けること自体も、退位の目的の1つだったことは昨年8月に話された「お気持ち」から明らかだ。

〈天皇の終焉に当たっては(中略)様々な行事と、新時代に関わる諸行事が同時に進行することから、行事に関わる人々、とりわけ残される家族は、非常に厳しい状況下に置かれざるを得ません〉

 大喪の礼がいかに大変な行事で、周囲に精神的、肉体的な負担を強いるかは、昭和天皇の崩御を経験されている陛下が最もよくご存じだ。陛下は熟考の上で、その規模を縮小すべきだと述べられた。

「安倍首相の立場は、そうした陛下の思いとは逆行しています。大喪の礼の必要性を訴えることは、生前退位もやるべきではないという考え方なのです」(政治記者)

 だが、ある宮内庁関係者はそうした安倍首相の主張に違和感を覚えるという。

「『大喪の礼』とは、政教分離の観点から昭和天皇の崩御のときに“国の儀式”として初めて規定されたもの。仮に安倍首相の言葉が皇室の“私的な儀式”である『大喪儀』のことを指しているとしても、現在の形式である神道で行われるようになったのは明治天皇以降のことで、それまでは仏式で行われていました。それのどこが皇室の“伝統行事”なのでしょうか」

撮影/雑誌協会代表取材

※女性セブン2017年2月16日号

関連記事

トピックス

民放ドラマ初主演の俳優・磯村勇斗
《ムッチ先輩から1年》磯村勇斗が32歳の今「民放ドラマ初主演」の理由 “特撮ヒーロー出身のイケメン俳優”から脱却も
NEWSポストセブン
亡くなった米ポルノ女優カイリー・ペイジさん(インスタグラムより)
《米ネトフリ出演女優に薬物死報道》部屋にはフェンタニル、麻薬の器具、複数男性との行為写真…相次ぐ悲報に批判高まる〈地球上で最悪の物質〉〈毎日200人超の米国人が命を落とす〉
NEWSポストセブン
和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
「プラトニックな関係ならいいよ」和久井被告(52)が告白したキャバクラ経営被害女性からの“返答” 月収20〜30万円、実家暮らしの被告人が「結婚を疑わなかった理由」【新宿タワマン殺人・公判】
NEWSポストセブン
松竹芸能所属時のよゐこ宣材写真(事務所HPより)
《「よゐこ」の現在》濱口優は独立後『ノンストップ!』レギュラー終了でYouTubeにシフト…事務所残留の有野晋哉は地上波で新番組スタート
NEWSポストセブン
山下市郎容疑者(41)はなぜ凶行に走ったのか。その背景には男の”暴力性”や”執着心”があった
「あいつは俺の推し。あんな女、ほかにはいない」山下市郎容疑者の被害者への“ガチ恋”が強烈な殺意に変わった背景〈キレ癖、暴力性、執着心〉【浜松市ガールズバー刺殺】
NEWSポストセブン
英国の大学に通う中国人の留学生が性的暴行の罪で有罪に
「意識が朦朧とした女性が『STOP(やめて)』と抵抗して…」陪審員が涙した“英国史上最悪のレイプ犯の証拠動画”の存在《中国人留学生被告に終身刑言い渡し》
NEWSポストセブン
早朝のJR埼京線で事件は起きた(イメージ、時事通信フォト)
《「歌舞伎町弁護士」に切実訴え》早朝のJR埼京線で「痴漢なんてやっていません」一貫して否認する依頼者…警察官が冷たく言い放った一言
NEWSポストセブン
降谷健志の不倫離婚から1年半
《降谷健志の不倫離婚から1年半の現在》MEGUMIが「古谷姓」を名乗り続ける理由、「役者の仕事が無く悩んでいた時期に…」グラドルからブルーリボン女優への転身
NEWSポストセブン
橋本環奈と中川大志が結婚へ
《橋本環奈と中川大志が結婚へ》破局説流れるなかでのプロポーズに「涙のYES」 “3億円マンション”で育んだ居心地の良い暮らし
NEWSポストセブン
10年に及ぶ山口組分裂抗争は終結したが…(司忍組長。時事通信フォト)
【全国のヤクザが司忍組長に暑中見舞い】六代目山口組が進める「平和共存外交」の全貌 抗争終結宣言も駅には多数の警官が厳重警戒
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《前所属事務所代表も困惑》遠野なぎこの安否がわからない…「親族にも電話が繋がらない」「警察から連絡はない」遺体が発見された部屋は「近いうちに特殊清掃が入る予定」
NEWSポストセブン
放送作家でコラムニストの山田美保子さんが、さまざまな障壁を乗り越えてきた女性たちについて綴る
《佐々木希が渡部建の騒動への思いをストレートに吐露》安達祐実、梅宮アンナ、加藤綾菜…いろいろあっても流されず、自分で選択してきた女性たちの強さ
女性セブン