国内

2千万件以上の医学論文学んだAI 白血病患者を救う

介護ロボットも次々と開発。写真はタピア(MJIのHPより)

続々と現実の世界で活躍を始めているAI(人工知能)。この3月にはAIを搭載した「全自動衣類折りたたみ機」も発売される。

 また、医療の分野でもすでにAIが実用化に向けて動き出している。東京大学医科学研究所の附属病院は、IBMが開発したAI「ワトソン」に2000万件以上の医学論文を学習させた。診断が難しく治療法も多岐にわたる、白血病などのがん患者の診断に役立てる臨床研究を進めている。

 昨年8月には「急性骨髄性白血病」と診断されていた60代の女性患者が、実は「二次性白血病」であることを「ワトソン」がわずか10分で見抜き、抗がん剤の種類を変えるよう提案したと発表。患者は無事に退院した。判断が遅れれば死亡の可能性もあり、AIが患者の命を救ったことになる。

『AIの衝撃』(講談社)の著者で作家・ジャーナリスト・情報セキュリティ大学院大学客員准教授の小林雅一さんが言う。

「患者の遺伝子情報をワトソンに入力することで、その人に合った適切な治療法がわかります。ディープラーニングによって、病気の原因となる遺伝子変異のパターンを発見し治療することができるのです。AIがさらに進化すれば、将来的にがんを根治できる可能性も充分あります」

◆要介護者に寝返りを打たせるなど負担が激減

 高齢化がますます進む日本では、介護の負担をいかに軽くするかが緊急の課題。AIを搭載した介護ロボットも次々と開発されている。

 昨年7月には「Tapia(タピア)」という女の子型のコミュニケーションロボットが登場(税抜き9万8000円)。相手の言葉から感情を読み取り、それに合った会話をしてくれるので、顔認識機能も併用して介護現場への導入も目指している。発売元のMJI・千葉さやかさんの話。

「タピアの名前は、トークとユートピアを足したもの。理想のおしゃべり相手になりますようにとの願いを込めています。生活サポート、見守り、会話という3つの機能があり、会話では『ありがとう』などとポジティブな会話をすればするほど、会話の量が増えるようになっています」

 見守り機能は、家族がスマートフォンを通じて遠隔で「タピア」のいる現場を確認でき、ビデオ通話ができる。さらに年内には、「タピア」が健康状態のチェックや要介護者が徘徊している恐れのある際に通知するなどの機能も搭載する予定だとか。

 AIロボットは介護の担い手不足解消にも役立ちそうだ。東京大学特任准教授で人工知能学会の倫理委員長も務める松尾豊さんが話す。

「人を扱うものなので、安全面の問題で導入に時間はかかると思いますが、要介護者の状態を見て、自動的に寝返りを打たせるといったことも、技術的には充分可能になります」

 要介護者の大量のケアプランをAIに学習させ、利用者に最適なプランを提示させる研究も進んでいる。

※女性セブン2017年2月16日号

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