自分の人生を生きたい女性が選ぶ死後離婚だが、デメリットはないのだろうか。『死後離婚』(洋泉社刊)共著者の一人で行政書士の中村麻美氏が言う。
「妻には夫の親の遺産を相続する権利はありませんし、姻族関係を続けることで金銭的に得をすることはない。強いて言えば、もう二度と夫の親族に戻れないことぐらいでしょうか」
かように死後離婚がメリットだらけなら、妻を看取った男性がそれを選んでも良さそうだが、そういったケースはほとんどない。
「そもそも夫の側には、妻の両親の面倒を見る、という発想自体がないのです。特に高齢の男性は介護を現実的に考えていません。もし妻の親に介護が必要になっても、自分で手を動かすのではなく、施設に入ってもらうことを考えます。そこが男女の違いです」(同前)
これらは夫がこの世を去った後の話だが、亡夫としても無関係とはいかない。
「たとえば、亡夫に兄弟がいなければ、残された家族の介護問題や墓の管理は、妻の役目になる。そういった負担を妻が拒んだことで、子供にその役目が降りかかるケースがあります」(共著者でお墓・葬儀コンサルタントの吉川美津子氏)
死んだ後に家族に迷惑がかからぬよう、生前から妻との関係は良好にしておくべきだろう。もっとも「一緒のお墓に入ります」と承諾されていたとしても、安心はできないのだが。
※週刊ポスト2017年2月27日号