このツイートをした人物は米メディアの関係者で、「安倍の表情がホット」とツイート。これが約3万7000リツイート(引用)され、約6万の「いいね」がついたのだった。安倍氏の今回の外交については、民進党の野田佳彦幹事長が「スネ夫」と評するなど、一部では不評だ。海外の一般人は今回の外交についてどう見ているのか。件のGIF動画につけられた海外の人によるコメントをいくつか紹介しよう。
〈もし、安倍のこの表情が「さっさとここから退出させてくれ」でないとすれば、オレにはこれが一体どんな表情なのか分からない〉
〈私は安倍氏が「助けて!」と言わないまでも目で訴えかけていると思う〉
〈安倍の真意を翻訳してやろう。「オレはなんでこんな狂った野郎と一緒にいるんだ」〉
これらはアメリカの反トランプ派によるものと思われるが、まぁ、安倍氏が相当被害者扱いされている。トランプ氏のような極悪人と付き合わされて可哀想……といった論調もあるのだ。
安倍氏及び政権与党への批判をする際、リベラル派は「海外メディアはこう報じている」と述べることが多い。だが、実際にその記事を書いているのは日本人(または日系人や外国籍を持つ元日本人)であることが多い。今回の件についてもトランプ氏に批判的なニューヨークタイムズの電子版ではMotoko Richという記者がこう書いている。
〈2人のリーダーの間でぎこちなく長すぎるハンドシェイクがあった。(そして安倍氏が解放された際の不快げな表情もあった)〉
冒頭のGIF動画については、多くの日本のテレビメディアがカットした部分であり、それには異議を呈してもよいだろう。しかしながら「海外メディアが報じた」といってもそれは所詮電子版で、日本に批判的な日本人が書いていることが多い点も留意すべきである。あたかも「世界は安倍に批判的だ! 海外メディア様もこう言ってる!」と政権叩きに利用するも、書いているのが日本人だと分かった時にネットでは反論をくらうことがある。幸いなことに、海外メディアは署名記事が多いので、誰が書いているのかわかるのは良い点である。
●なかがわ・じゅんいちろう/1973年生まれ。ネットで発生する諍いや珍事件をウオッチしてレポートするのが仕事。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』など。
※週刊ポスト2017年3月3日号