肥満傾向がある成人男女160名を二つのグループに分け、一つはビフィズス菌BifiXを含む飲料を、もう一つはビフィズス菌BifiXを含まない飲料を12週間、毎日摂取したところ、ビフィズス菌BifiXを含む飲料を継続摂取したグループでは、8週目と12週目で内臓脂肪面積が有意に減少していた。一方、ビフィズス菌BifiXを含まない飲料を継続摂取していたグループは、まったく減少が見られなかった。
この結果は、「食べなくても太る」「水を飲んでも太る」と悩む人の原因究明にもつながるのだろうか?
「海外での検証ですが、腸内を無菌にしたマウスに、一群には太ったヒトの菌、もう一群にはやせたヒトの菌を植え付け、同じエサを食べさせてどうなるか調べた例があります。すると、太っているヒト由来の菌を植え付けたマウスは、同じエサでも太るということがわかりました。この結果を考えても、腸内細菌や、その細菌が生成する短鎖脂肪酸は太りやすさの要因の一つになっていることが考えられます。ということは、腸内のビフィズス菌の量が太りやすさに影響してくる可能性はあります」(西嶋さん)
今ではその強さを誰もが疑わないビフィズス菌BifiXだが、その強みを理解してもらうのには時間がかかった。
「とにかく、根気強く説明と研究を続けました。『おいしさと健康』を掲げる会社にとって、この菌は本当に体にいいんですよとあきらめずに話し続けるうち、社内でも理解が広がりました。人の健康というのは、ちゃんと歯が残っていて、食べたものを咀嚼し、消化できて、さらに腸内にいい微生物がいて成り立っていると思います。『口腔から腸管までの健康を守る』ことが、食品メーカーの研究として基本であり、それが一番、大事だと考え、常に意識しています」(西嶋さん)
ビフィズス菌のなかでは随一の強さを持つビフィズス菌BifiXについての研究がすすむにつれ、その強さを示す結果の積み重ねが続いている。今後、ビフィズス菌BifiXにはどんな可能性が残っているのだろうか。
「しばらく内臓脂肪に関わって来ましたが、女性の関心が高い分野の検証もしていきたいと思っています。美容関連なども可能性が十分にある分野だと思うので、どれほどの効果を得られるのかをちゃんと検証していきたいですね」(西嶋さん)
なぜ、ここまでビフィズス菌にこだわるのか。江崎グリコがおいしさと健康にこだわるからだけでなく、日本人の健康を守る食品メーカーの研究にふさわしいのではないかという西嶋さんの個人的な思いも、このこだわりに込められている。
「腸内細菌全体に占めるビフィズス菌の割合は、日本人の大人の場合、平均5~10%と言われています。こんなにビフィズス菌が多い人種は珍しいんですよ。なぜ、それほど多いのかという理由はよくわかっていませんが、きっと、日本人にとってビフィズス菌は特に重要なものではないかと思っています」(西嶋さん)
日本人の健康を深く追求して特徴を把握し、異なる食生活や生活習慣との違いを浮かび上がらせれば、それは世界の人々の健康にもつながるはずだ。江崎グリコ健康科学研究所は、健康長寿を目指し、いつまでも、おいしく食べて、楽しく生きる健康づくりのあり方を考えた結果、生まれた研究機関だ。これからも、世界中の人々の生活に密着した、食べることが健康につながる研究が続く。