テーマは、ディレクターが出してきます。ぼくは、ほとんどNOは言いません。基準は、そのディレクターが本気で撮りたいかどうか。『ヤクザと憲法』のディレクターは、報道局の大部屋で「ヤクザを撮りたい、ヤクザ、ヤクザ」と大声で言っていました(笑い)。さすがにこのテーマは、迷いましたけど。
ドキュメンタリーで問題を起こさずに物議を醸さないものが、果たして本当にいいものと言えるでしょうか。リスクを排除することばかり考えると、物語が全部安易安直なものになっていくと思うんです。それを視聴者は、魅力的だとは思わないはず。
視聴者は、自分よりもずっと頭のいい、物がわかる人たちだと思っています。ドキュメンタリーを通して、視聴者に教えてやるなんて思ったことは一度もありません。東海テレビのドキュメンタリー作りは、撮影期間を決めていない。さらにストーリーもどうするか決めずに自由に撮影を始める。
ドキュメンタリーを作るに当たって、ぼくらもディレクターもどういう物語になるか徹底的にイメージします。だけど、最終的に、その通りになってしまったら、自分の頭の中の考えを現実に当てはめるだけになってしまいます。
さんざん考えた末に、それでも現実は違ったといえるような筋道をつくっておく。それがプロデューサーの仕事だと思っています。
※女性セブン2017年3月9日号