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【法律相談】接骨院が業者に住所を漏洩 違反行為では?

勝手に住所を漏洩されたらどう対応すべきか

 販売や集客を促進する手段としてDM(ダイレクトメール)は非常に有効だが、いつしか個人情報が業者にバラまかれ、「勝手に送りつけてきやがって」と、不快感を示す人は少なくないだろう。接骨院が住所を業者に知らせてしまった場合、これは違反行為ではないのか? 弁護士の竹下正己氏が回答する。

【相談】
 腰を痛め接骨院に通い始めたところ、医療関係や健康食品等のDMが送られてくるようになりました。その接骨院が私の住所を業者に知らせたのかもと確認すると、やはりそうでした。接骨院の主張は私の健康を気遣ってのことだというのですが、これは個人情報保護法違反なのではないでしょうか。

【回答】
 ご指摘の通り、当該接骨院は個人情報保護法(保護法)に違反していると思います。生存する人の住所や氏名は、特定の個人を識別する保護法上の個人情報に当たります。そして、業務に使うなどして反復継続し、6か月以上5000件以上の個人情報をコンピューターなどで管理している者は、個人情報取扱事業者として個人情報を保護する義務を負います。

 具体的には個人情報を不正取得したり、第三者に開示したりすることができません。なお、保護法は一昨年改正され、今年5月から施行されますが、改正法では6か月・5000件の要件は必要なくなります。

 そこで当該接骨院が、患者から取得した、その個人情報である住所氏名等を医療機関や健康食品会社に提供することについて、患者の同意を得ていない限り、これらの情報を業者に開示することは、保護法第23条1項の違反です。

 もっとも、違反したからといって、直ちに処罰されません。まず、接骨院を所管する厚労省(改正法施行後は個人情報保護委員会)から助言や指導がなされ、あるいは必要な措置を取るよう勧告されます。事業者が勧告に応じなければ命令を受け、この命令に違反して初めて、罰金や懲役で処罰されるという仕組みになっています。

 そのほか、別に民事の問題があります。個人の氏名や住所は見知らぬ人に知られたくない個人情報です。最高裁は、「自己が欲しない他者にはみだりにこれを開示されたくないと考えることは自然なことであり、そのことへの期待は保護されるべきものである」との考えを示しています。

 プライバシーに係る情報は法的保護の対象となりますから、本人の同意を得ないで第三者に住所氏名を開示した接骨院は、プライバシー侵害の不法行為責任を負うことになるでしょう。

【弁護士プロフィール】
竹下正己(たけした・まさみ):1946年、大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年、弁護士登録。

※週刊ポスト2017年3月10日号

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