NPO法人の高齢者安全運転支援研究会では、30項目に及ぶ「運転時認知障害早期発見チェックリスト」を公表している。例えば、こんな質問が並ぶ。
・今までできていたカーステレオやカーナビの操作ができなくなった。
・運転している途中で行先を忘れてしまったことがある。
・運転中にバックミラーをあまり見なくなった。
・アクセルとブレーキを間違えたことがある。
・反対車線を走ってしまった(走りそうになった)。
・気がつくと自分が先頭を走っていて、後ろに車列が連なっていることがある。
もちろん、アクセルとブレーキの踏み間違いや道路の逆走は、重大事故に直結する可能性が高いため、複数回経験があるならば素早く運転を諦めたほうがいいだろう。だが、その段階より前でも「危険信号」はある。前出の菰田氏がアドバイスする。
「高齢になると、脳から出る指令は手よりも足に伝わりにくくなると言われています。そのため、きっちりと一時停止ができなくなったり、急ブレーキを踏む回数が増えたりしてくると危険です。もし、運転者本人が自覚していなければ、家族が一緒にドライブレコーダーなどを見て、客観的に『こんなに危ない運転をしているんだよ』と教えてあげるべきです。
何より、高齢者の運転するクルマのあちこちに擦りキズが増えたら、そろそろ運転はしないほうがいいというサインです。本人に確認しても、どこでつけたキズか把握していなかったり、自分がやったキズではないと主張したりすればなおさらです」
労働災害の発生確率を分析したマーケティング用語に“ハインリッヒの法則”があるが、クルマの運転も同様。ドカンとぶつかる重大事故を未然に防ぐためには、家族をはじめ周囲の人が高齢ドライバーを放置せずに、「危険な兆候」をどれだけ見つけてあげられるかが重要になる。