シャープは2017年3月期の業績が大幅に改善する見通しで、東証一部への復帰も間近と見られる。このV字回復を主導したのが、親会社となった鴻海から送り込まれた戴正呉社長だ。家電業界を長年取材する立石泰則氏がレポートする。
同氏が注目するのは戴社長による社員への「メッセージ」だ。その一つは《短期的には、一日も早く黒字化を実現するとともに、シャープを確かな成長軌道へと導き、売上・利益を飛躍的に拡大していくことです。その実現のためには、鴻海との戦略的提携が鍵となります。両社の強味を活かした幅広い協業を加速し、大きなシナジーを生み出せるよう、私が先頭に立って取り組みます》というものだ。
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載氏は社長就任後、社員に直接呼びかける「社長メッセージ」を節目節目で発信し、本社のスリム化を徹底した。
社員の意識改革を求めるメッセージを、戴社長はこれまで七回配信している。いわば精神論に過ぎないが、それでも裏付けされる結果が目に見えるようになれば、戴社長と鴻海の求心力は高まり、シャープは名実共に鴻海グループの一員となる。
本社のスリム化の最大の特徴は、「社長室」と「管理統括本部」の新設である。
前者は約二百人規模で、傘下に人事や法務、IT、広報、渉外などの各担当を置く。東京支社は組織として解消し、経産省など官庁との交渉も社長室が担う。いわば、戴社長の参謀本部である。
後者には、財務部や経理部、経理管理部、資材部、総務部などが置かれる。つまり、本社部門をこの二つのセクションが統括し、その上に戴社長が君臨するというわけである。指揮命令系統をシンプルにして、親会社の鴻海からの指示がシャープの末端にまで行き届くようにしたのだ。