前向きに考えるなら、鴻海とのシナジーが効率良く発揮できるようにしたものだと言える。少しネガティブに考えるなら、鴻海による管理が強化され、シャープの自由度が低くなったとも言える。
戴社長はシャープの経営に専念するため堺本社から離れることが少ない。その戴社長が東京のメディアの前に初めて姿を現したのは、十一月一日の二〇一六年度第2四半期連結業績発表の席だった。
写真よりも小柄に見えた戴社長だが、力強く野太い声から押しの強さを連想させた。鴻海で厳しい競争を勝ち抜いてきただけあって、腰が据わった印象を受けた。
決算概要では、営業利益が二十五億円と三期ぶりの黒字化を達成し、本業の回復の兆しを見せた。中間決算で見ても七千五百万円と金額は少ないが黒字化を達成している。社長就任からわずか三カ月での成果である。
質疑応答に入って分かったのは、シャープ社長として「言えること、言えないこと」、あるいは「判断できること、できないこと」を明確に区別し、軽率な発言をしないことだ。
たとえば、中期経営計画の発表が遅れているのではないかという質問に対し、戴社長は「昨年の中期経営計画のような黒字(見通し)と発表しておきながら、結果は大赤字になりました。私は、そういうことはしたくない。発表したことは必ず実現します。ですので、来年の四月頃には発表したいと思っています」と毅然として答えた。