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呉智英氏 韓国を「南朝鮮」と呼ぶ人に反応

「朝鮮」は民族を表わす言葉だから、韓国という国を強調する時以外、広く使われる。朝鮮半島、朝鮮語などだ。韓国は、自国を国家として韓国と称するし、その国語を韓国語と言う。しかし、韓国には朝鮮ホテルも、朝鮮日報も、朝鮮大学さえある。日本でも、日本、大和、敷島など、さまざまな呼び方がある。同じことだ。

 数年前、学生と話していて「北朝」という言葉が出てきて驚いた。五、六世紀支那の話か、光明天皇の話かと思ったら、北朝鮮のことだった。確かに、分裂国家だから南北朝と言えなくはないのだけれど。学生によれば、北朝鮮の略称は北朝じゃないか、というのだ。普通それは「北鮮」と言う。これが差別だというので、戦後、というより1970年代以降に禁圧されて、分からなくなったのだ。

 禁圧の理由は、「鮮」は「賤」に通じるから差別だとか、頭の「朝」をはねるのには民族絶滅の意図が込められているとか、滅茶苦茶であった。それならアメリカを「米」と略すのはなぜ許されるのか。最近は「訪朝」という言葉まで広がっている。訪朝って日本(我が朝)へ来るという意味だ。

 前述のように「北鮮」は1970年代まで普通に使われていた。在日朝鮮人がそう言うのを聞いたこともある。高校の世界史の授業で使う『標準世界史年表』(吉川弘文館)にも、1950年7月の箇所に「北鮮軍、釜山橋頭堡に迫る」と出ていたのである。

●くれ・ともふさ/1946年生まれ。日本マンガ学会前会長。著書に『バカにつける薬』『つぎはぎ仏教入門』など多数。

※週刊ポスト2017年4月21日号

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