吉崎住職の祖父が法華宗を信仰し、1931年に茨城県下館市(現筑西市)にお寺を開堂したのが始まりで、1953年にここ代々木へ移転してきた。歴史は100年に満たないが、信仰に裏打ちされたお寺のようだ。
納骨堂は2006年に本堂を新築する際に、従来のものに加え、増設したという。自動搬送式を選ばなかったのは「法華経の信仰の規範に合わない」ことに加えて、「何千もの基数だと責任を持って供養できず、宗教的意義もないがしろにされる」からとのことだが、さて。
靴を脱いで上がる。納骨堂は、フローリングのフロアを進んだ右手にあった。5m×25mほどの広さで、通路の両側に私の背より高くて立派な仏壇(に見える)60基と、ロッカーが5段に合計160基並んでいる。
「何人もがここに眠ってらっしゃると思うと身がひきしまる」と、同行したカメラマンが耳打ちしたが、確かに。お香のにおいに満ち、仏壇型もロッカー型も材質は木で、黒の本塗り。凜とした空気を感じ、自動搬送式のお墓と趣が異なるな、と思う。
「まず、あちらのご本尊にご挨拶してから、個別のお墓にお参りくださいとご案内しています」と吉崎住職が言う。それは、永代供養墓の上に祀まつられ、納骨堂全体を見守るという法華宗の「曼荼羅本尊」で、宗祖・日蓮聖人の座像もあった。
仏壇型の扉を開くと、「南無妙法蓮華経」の掛け軸が目の高さの位置に掛けられ、仏具も仏壇さながらだ。故人の写真のほか、腕時計やアクセサリーなど故人の愛用品らしきものが入れられたものも多い。
岡田家のお墓には、きれいなプリザーブドフラワーが供えられていた。大理石で区切られた下段に8人分の骨壷が入る。
33年間使用でき、180万円。ということは、1年につき約5万5000円、1か月約4500円かと、頭の中で算盤をはじく。正直、180万円を「高い」と思ったが、月額にすると私の通っているジムの大きい方のロッカー代とほぼ同額だ。
ロッカー型もまた文字通りの形状で、こちらは「団地」だなと思った。団地には団地の良さがある。49cm×32cm×44cmとコンパクトだが、内部に金箔が貼られ、美しい。やはり中央に掛け軸。骨壷2つが入り、故人ゆかりのグッズも多少は入れられる。使用期間は13年と33年があり、60万円から。