さまざまな掃除グッズが登場し、あまり見かけなくなったバケツ。だが、1923年(大正12年)からバケツを作り続けている『渡辺金属工業』(兵庫県姫路市)では、『オバケツ』という名のトタン製のバケツが人気だという。
「樹脂製のポリバケツが普及し始めた1965年(昭和40年)頃からトタンのバケツは売り上げが落ち始めました。それで何とか生き残れないかと思い、世の中にないバケツ作りを始めたんです」
と、開発当時を振り返るのは、同社社長の渡辺良幸さん。
主婦の意見を取り入れて、部屋に置いてもオシャレなデザインを模索。機能面では、サビに強く、耐久性があり、素材から部品まですべて良質な日本製であることにこだわり、5~6年かけて、今のレトロなデザインが完成した。
だが、当時はインテリアショップがあまりなく、販売先を探すのに苦労したものの、1983年に大阪(江坂)に開店した『東急ハンズ』に活路を見出した。
「藁にもすがる思いですぐ、営業経験のない私がアポなしで店頭に売り込みに行ったんです。今から思えば失礼な訪問でしたが、バイヤーのかたに大変興味を持っていただき、取り扱いがスタート。他の店舗にも紹介していただいて、知名度が上がりました」(渡辺さん、以下「」内同)
それからは順調に売り上げを伸ばし、現在までにシリーズ累計で300万個以上を売り上げた。それにしてもユニークな名前。由来は?
「暮らしの中で、バケツの地位を向上したいという思いから、私が“オバケツ”と命名しました。ローマ字にすることでオシャレになり、名前からも興味を持ってもらえて、ネーミングの大切さを感じました」
世の中にないデザインや機能を持った商品を作るため、バケツを作る機械も開発。
「社員だけでなく、家族や知人に使用してもらい、意見を取り入れて改良を重ねました。素材は、屋根に使う“トタンの波板”と同じで、小さな部品まですべて良質な日本製を使用。職人の手作業で仕上げるため、大量生産ができず、1日に300~400個が限界です」(渡辺さん)。
レトロなシルバーはじめ、アイボリー、赤、ブラウン、グリーンなどの色も人気だ。
※女性セブン2017年4月27日号