しかし、在日米軍基地を標的にすると北朝鮮が明示したために、実態が抜本的に変化した。当然のことであるが、在日米軍基地は日本の領土に設置されている。在日米軍基地を攻撃するということは、日本を攻撃するというのと同義である。
日米安保条約第5条の前段では、〈各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従って共通の危険に対処するように行動することを宣言する。〉と定められている。北朝鮮による在日米軍に対する攻撃は日米安保第5条の適用事案だ。
言うまでもないが、日本の領土が攻撃されるのであるから、これは個別的自衛権を行使しなくてはならない事案だ。北朝鮮は、3月7日に日本に対する「宣戦布告の用意がある」と表明したのである。
●さとう・まさる/1960年生まれ。1985年、同志社大学大学院神学研究科修了後、外務省入省。主な著書に『国家の罠』『自壊する帝国』など。共著に『新・リーダー論』『あぶない一神教』など。本連載5年分の論考をまとめた『世界観』(小学館新書)が発売中。
※SAPIO2017年5月号