ところが、値上げで酒を買えなくなり、ウォッカのかわりにアルコール入りの入浴剤を飲む人が絶えず、年間1万3000人以上が死亡。新たな社会問題となっている。日本でも戦後の闇市時代に酒を買えずに「バクダン」(メチルアルコール)を飲んで死者や健康被害が多く出たのと同じ現象である。
日本では大化2年(646年)に出された「薄葬の詔」が禁酒令の最初とされ、民の飲酒・酒造などを禁じた。鎌倉、室町時代以降も朝廷や幕府が禁酒令を出したが、目的は当時の“高額納税者”だった酒造業者の保護のために酒の密造を禁じたという面が強いとされる。
明治政府も日露戦争の戦費調達のために酒税を大幅に増税し、この頃、ビール税も創設された。
昔から、日本の政府は酒を“金のなる木”と考えていたのであり、今さら「国民の健康のために飲酒を規制し、値上げする」と言われても眉に唾をつけた方がよさそうだ。
※週刊ポスト2017年4月28日号