国内

自動搬送式の半額 早稲田の「動かない」格安室内墓

「龍善寺」には「動かない格安の室内墓」が(龍善寺HPより)

 ひとくちにお墓と言っても、その内実はさまざまだ。私たちが当たり前のようにイメージしていた外墓に代わって、今、急速に増えている「室内墓」。その中には、参拝ブースに保管庫から骨壷が自動搬送される「動くお墓」と「動かないお墓」がある。ノンフィクションライターの井上理津子さんが、とある「動かない室内墓」をレポートする。

 * * *
 東京都新宿区早稲田に、家族用で48万円と、めっぽう安い「動かないお墓」を見つけた。安価すぎて、怪しくはないか。ひねくれた見方をして、行ってみた。

 やはり近年、改築したであろう4階建て。浄土真宗の龍善寺というお寺だ。

「東京には、江戸のまちづくりに伴って創建されたお寺が多いんですね。うちもそうで、江戸時代の初め、1638年の創建です」

 14世住職という平松浄心さん(58才)が迎えてくれた。戦後すぐの建造だった木造の本堂が、地層の関係で傾いてきて、そのままでは危険となって、2006年に建て替えた。その際に、独自の発想で、まず永代供養墓を、続いて堂内納骨堂を設けたのだそうだ。順序立って、説明をお願いする。

「近隣にワンルームマンションが多いんですね。住んでいる単身の人たちの多くは、後継ぎがいない。永代供養墓の需要は多いだろうと考えたのです」

 家単位、あるいは個人単位のお墓ではなく、後継者がいない人たちの遺骨を合葬するのが永代供養墓。最近多くのお寺に設けられているが、そのパイオニアなのである。「分骨3万円、一般合葬型28万円」などに設定し、ホームページに載せると、近隣ばかりか北海道など遠方からも問い合わせがひっきりなしに入り、驚いたという。

「実は、私は寺を継ぐ前、40才まで銀行員だったので、寺を普通の人たちの目線で見ることができます。私自身がこういうのがあったらいいなという形を実現しました」と平松住職。

 自動搬送式の業者から営業が相次いだが、目もくれなかったのは、経営面での疑心と共に、「なぜ、お参りのたびに遺骨を運んでくる必要があるのか」という疑問。もっといえば、「遺骨に向かって手を合わせても意味がない」との思いだという。

「お墓は、亡くなったかたのためのものではなく、お参りに来るかたのものなのです。亡くなったかたから『いのち』の意味を教えてもらう場だと思うんです。ひいては限りある『いのち』を、どうしたら精一杯生きることができるかと考える場。ですから、室内のメリットを生かして、そういうことが最大にできるお墓をつくったわけです」

「魂いのちの故ふる郷さと 早稲田墓陵」と名づけられた納骨堂が地下にあった。地下といっても、薄いベージュの広々としたフロアがあり、ずいぶん明るい。

 自動搬送式の参拝ブースに似た、しかし私がこれまでに取材したどのブースよりも広い個室の参拝室が8室、並んでいた。アナログ方式だ。受付で、係の人に故人の名前を伝えると、案内される。

関連キーワード

関連記事

トピックス

元子役のパイパー・ロッケル(Instagramより)
「1日で4億円を荒稼ぎ」米・元人気子役(18)が「セクシーなランジェリー姿で…」有料コンテンツを販売して批判殺到、欧米社会では危機感を覚える層も
NEWSポストセブン
観音駅に停車する銚子電気鉄道3000形車両(元伊予鉄道700系)(時事通信フォト)
”ぬれ煎餅の奇跡”で窮状を脱した銚子電鉄を悩ませる「米価高騰」 電車を走らせ続けるために続ける試行錯誤
NEWSポストセブン
元旦に離婚を発表した吉岡美穂とIZAM(左・時事通信フォト)
《3児の母・吉岡美穂がIZAMと離婚》夫のために「“鬼嫁キャラ”を受け入れた妻の想い」離縁後の元夫婦の現在
NEWSポストセブン
イスラム組織ハマスの元人質ロミ・ゴネンさん(イスラエル大使館のXより)
「15人ほどが群がり、私の服を引き裂いた」「私はこの男の性奴隷になった…」ハマスの元人質女性(25)が明かした監禁中の“惨状”
NEWSポストセブン
2026年1月2日、皇居で行われた「新年一般参賀」での佳子さま(時事通信フォト)
《礼装では珍しい》佳子さまが新年一般参賀で着用、ウエストまわりに“ガーリー”なワンポイント 愛子さまは「正統的なリンクコーデ」を披露
NEWSポストセブン
中国出身の女性インフルエンサー・Umiさん(TikTokより)
〈抜群のスタイルとルックスが一変…〉中国人美女インフルエンサーが示唆していた「潘親方(特殊詐欺グループのボス)」との“特別な関係”とは《薬物検査で深刻な陽性反応》
NEWSポストセブン
立川志らく氏(左)と貴乃花光司氏が語り合う
【対談・貴乃花光司氏×立川志らく氏】新大関・安青錦に問われるものとは?「自分の相撲を貫かなければ勝てません」“師匠に恵まれた”ことも一つの運
週刊ポスト
SNS上で拡散されている動画(Xより)
「“いじめ動画”関係者は始業式に不参加」「学校に一般の方が…」加害生徒の個人情報が拡散、YouTuberが自宅突撃も 県教委は「命にかかわる事態になりかねない」《栃木県》
NEWSポストセブン
女優・羽野晶紀と和泉元彌の母の節子さん(右・時事通信フォト)
《女優・羽野晶紀“嫁姑騒動”から24年目 の異変》元日に公開された和泉節子さんとの写真から伝わる「現在の距離感」
NEWSポストセブン
SNS上で拡散されている動画(Xより)
【栃木県・県立高校で暴行動画が拡散】学校の周りにインフルエンサーが殺到する事態に…県教育委は「命にかかわる状況」 弁護士は「典型的ないじめの構図」と指摘
NEWSポストセブン
中居の近影をキャッチ(2025年12月下旬)
《ゴルフ用ウェアで変装して百貨店に…》中居正広、外出頻度が増えている 表舞台では“盟友たち”が続々言及する理由
NEWSポストセブン
16年ぶりに写真集を出す皆藤愛子さん
16年ぶり写真集発売の皆藤愛子 「少し恥ずかしくなるくらいの素の姿や表情も、思い切って収めていただいています」
週刊ポスト