もともと春ドラマは、「新年度のスタート」という世間の空気を踏まえて、主人公が新たな仕事に挑む姿や、恋人との出会いを描いた物語が中心となっていました。なぜこの春は事件解決モノが多いのでしょうか?

 その理由は、「事件解決モノは、他のジャンルに比べてリアルタイム視聴が見込める」から。1話完結のフォーマットが多く、「内容がコンパクトでサクッと見られる」「何回か見逃しても問題ない」などの気軽さがあるため、他のジャンルよりも録画視聴される割合が少ないのです。

 一方、テレビマンから見た事件解決モノは、「安定した視聴率を稼げて、大コケの心配が少ない」手堅いコンテンツ。また、前クールの平均視聴率1位が『相棒』(テレビ朝日系)15.2%、3位が『科捜研の女』(テレビ朝日系)11.7%だったように、ヒットシリーズになる可能性を秘めているのも魅力です。

 さらに、春ドラマの初回視聴率は、1位『緊急取調室』17.9%、2位『警視庁・捜査一課長』14.5%、3位『CRISIS 公安機動捜査隊特捜班』13.9%、4位『小さな巨人』が13.7%と、上位4本を刑事ドラマが独占(ビデオリサーチ調べ、関東地区、以下同)。さらに、6位『貴族探偵』11.8%、7位『警視庁捜査一課9係』11.5%が続くなど(5位『ボク運命の人です。』(日本テレビ系)12.0%)、ここまで事件解決モノが上位を占めたのは記憶にないほどのロケットスタートを切りました。

 しかし、この好結果はテレビ業界にとって、必ずしも歓迎すべきものではありません。それどころか、大きな危機がすぐそこまで押し寄せていることの裏返しなのです。

◆ジャンルの偏りはテレビのイメージダウンに

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