抗生物質の服用にはデメリットも指摘される。抗生物質は「使い続けると効かなくなる」性質を持っている。乱用によって多くの菌が殺される代わりに、薬に耐性を持った「薬剤耐性菌」が増えていく。
「本来は、肺炎や髄膜炎などの感染症治療に際して、切り札となっていた抗生物質が効かずに、命を落としてしまうケースまで出ています」(同前)
薬に対する意識が日本と海外で異なるのは、糖尿病薬も同じだ。糖尿病は膵臓のβ細胞から分泌されるインスリン(ホルモン)の作用が不足することによって、慢性的に高血糖となる状態を指す。それを改善するため、インスリンの分泌を促す薬が処方される。現在、世界のトレンドはインスリン分泌を促すインクレチン(消化管ホルモン)の作用を長持ちさせる「DPP-4阻害薬」を使った治療だが、日本では他の薬も多く処方されている。
製薬業界向けのニュースメディア『Answers News』の調査によれば、日本国内で院内処方される糖尿病薬において処方数量(2014年度)の2位にアマリールというSU剤(スルフォニル尿素薬)がランクインしている。このSU剤が世界のトレンドと異なるという。東海大学名誉教授で糖尿病研究の第一人者である大櫛陽一氏が語る。
「SU剤は諸刃の剣です。膵臓のβ細胞を刺激することでインスリン分泌を促し血糖値を下げる薬ですが、β細胞に直接負荷を掛けるため、長期的にはインスリンの分泌機能が悪化し、逆に糖尿病を進行させてしまう副作用がある。欧米ではこのデメリットが認知されていたのでSU剤の使用はごく限定的なものにとどまっています」