私がこの現場を再訪することになったのは、鉄道の工事が一向に進まないという報道に接したからだ。昨年2月半ばに私が現場を訪れた時からすでに、運輸省の建設許可が下りないなどの理由で事業はつまずいていた。
そして1年後に定点観測して見えた現状からは、お世辞にも工事が進んでいるとは言えない。だから「整地作業を行っている」といくら説明を受けても、それが正直、どの程度の進捗状況なのかが判断できない。
現場の区間は5kmだから、全区間(143km)の5%にも満たない。当初予定の2019年開業は困難に思える。
【PROFILE】みずたに・たけひで/1975年三重県桑名市生まれ。上智大学外国語学部卒業。現在フィリピンを拠点にノンフィクションライターとして活動中。2011年『日本を捨てた男たち フィリピンに生きる「困窮邦人」』で開高健賞受賞。近著に『脱出老人 フィリピン移住に最後の人生を賭ける日本人たち』。
※SAPIO2017年6月号