国内

東本願寺で残業代未払い問題 兼業僧侶が増え労働者の意識も

僧侶の「仕事」と「修行」の境界線は?(京都・東本願寺)

「僧侶の労働時間の管理ができていませんでした。宗派としてこのような流れが続いておりましたが、いまは職員と宗派で新たな働き方について考えているところです」

 本誌にそう答えたのは、京都にある真宗大谷派本山・東本願寺の総務担当者だ。

 同寺は、2013年から研修施設で非正規雇用として働いていた「世話係」の男性僧侶2人から外部の労働組合(きょうとユニオン)を通じて未払い分の残業代を求められ、その一部の約660万円を支払った。彼らは早朝勤務や深夜労働を課せられ、時間外労働が計130時間を超えていた月もあったという。

「大谷派は1973年に職員組合と『残業代は支払わない』という覚書を交わしていた。そのため40年以上もの間、残業代を払っていなかった可能性が指摘されています」(大手紙社会部記者)

 終活・葬送ソーシャルワーカーで僧侶の労働問題に詳しい吉川美津子氏はこう解説する。

「現在は労働基準法に基づいて、従業員である僧侶と雇用契約を結んでいる寺がほとんどです。給料は葬儀や法要時のお布施、檀家が納める寺院の維持費などから支払われるため、寺の規模によって額は変わってきますが、経験の浅い僧侶だと平均月収は20万〜25万程度でしょう」

 東本願寺で問題となった“残業”についてはどうなのか。

「非正規雇用の僧侶でも、労働基準法に基づき必ず残業代は支払わなければいけません」(吉川氏)

 一方、宗教学者の島田裕巳氏はこのような見解を示す。

「僧侶というのは出家した人ですから、『世俗の生活を捨てた』ことが前提になっている。昔は彼らの雑務は『修行』であって、『仕事』ではないというのが共通認識だった。『修行』であれば給料は出ない。これが寺院の従来の考え方なのです」

 しかしいまでは寺の財政が逼迫していることもあり、副職(兼業)している僧侶も増えている。そのため「労働者」としての意識が彼らの中に芽生えているのだろう。

 仏の道にも迫られる“働き方改革”。そのうち朝のお勤めの前にタイムカードを押すのが当たり前になるのだろうか。

※週刊ポスト2017年5月19日号

関連キーワード

トピックス

(EPA=時事)
《2025の秋篠宮家・佳子さまは“ビジュ重視”》「クッキリ服」「寝顔騒動」…SNSの中心にいつづけた1年間 紀子さまが望む「彼女らしい生き方」とは
NEWSポストセブン
イギリス出身のお騒がせ女性インフルエンサーであるボニー・ブルー(AFP=時事)
《大胆オフショルの金髪美女が小瓶に唾液をたらり…》世界的お騒がせインフルエンサー(26)が来日する可能性は? ついに編み出した“遠隔ファンサ”の手法
NEWSポストセブン
初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
指名手配中の八田與一容疑者(提供:大分県警)
《ひき逃げ手配犯・八田與一の母を直撃》「警察にはもう話したので…」“アクセルベタ踏み”で2人死傷から3年半、“女手ひとつで一生懸命育てた実母”が記者に語ったこと
NEWSポストセブン
初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン
小説「ロリータ」からの引用か(Aでメイン、民主党資料より)
《女性たちの胸元、足、腰に書き込まれた文字の不気味…》10代少女らが被害を受けた闇深い人身売買事件で写真公開 米・心理学者が分析する“嫌悪される理由”とは
NEWSポストセブン
国宝級イケメンとして女性ファンが多い八木(本人のInstagramより)
「国宝級イケメン」FANTASTICS・八木勇征(28)が“韓国系カリスマギャル”と破局していた 原因となった“価値感の違い”
NEWSポストセブン
今回公開された資料には若い女性と見られる人物がクリントン氏の肩に手を回している写真などが含まれていた
「君は年を取りすぎている」「マッサージの仕事名目で…」当時16歳の性的虐待の被害者女性が訴え “エプスタインファイル”公開で見える人身売買事件のリアル
NEWSポストセブン
タレントでプロレスラーの上原わかな
「この体型ってプロレス的にはプラスなのかな?」ウエスト58センチ、太もも59センチの上原わかながムチムチボディを肯定できるようになった理由【2023年リングデビュー】
NEWSポストセブン