ライフ

【書評】起承転結をすり抜けて抽出された「怪」のエッセンス

【書評】『かわうそ堀怪談見習い』/柴崎友香・著/角川書店/1500円+税

【評者】鴻巣友季子(翻訳家)

 あの柴崎友香が怪談話を書いたと聞いて、一瞬、耳を疑い、すぐに購入した。なにしろ、柴崎友香といえば、芥川賞受賞作の『春の庭』など、「ストーリーらしいストーリーのない」「日々のひとこまを截りとった」作風で知られている。

 一方、古風な名称の「怪談」といえば、明確な起承転結があり、だんだん恐怖を盛り上げていって、オチがつく、というのがスタンダードな構成のはずだ。柴崎友香的なものの対極にあるのではないか。

 本作の主人公は女性小説家。デビュー作の恋愛小説が当たったために、その後も傾向の似た作品を書き、恋の悩み相談などに登場していると、「恋愛小説家」のレッテルを貼られることになった。それに嫌気がさし、怪談ものを書いてやろうと思い立つが、怪談作家修業をするうちに、うっすらと奇妙なことが起こりだす。

 誰だかわからない「鈴木さん」という人が自分の周りをちらちらする。怪談本を何度読んでもあるページの手前までくると、本が失くなってしまう。地面の上に、蛙の喉のような白くて丸い不思議な生き物を見る。暗闇で見つめてくる蜘蛛の光る目。ちっとも進まない人。やけに古臭い服装で写真に写っている女性……。

 主人公は霊感が強いという友だちに怖い実話を聞いて取材することもあり、その奇譚もときどき入れ子状に展開する。

関連記事

トピックス

近年ゲッソリと痩せていた様子がパパラッチされていたジャスティン・ビーバー(Guerin Charles/ABACA/共同通信イメージズ)
《その服どこで買ったの?》衝撃チェンジ姿のジャスティン・ビーバー(31)が“眼球バキバキTシャツ”披露でファン困惑 裁判決着の前後で「ヒゲを剃る」発言も
NEWSポストセブン
2025年10月末、秋田県内のJR線路で寝ていた子グマ。この後、轢かれてペシャンコになってしまった(住民撮影)
《線路で子グマがスヤスヤ…数時間後にペシャンコに》県民が語る熊対策で自衛隊派遣の秋田の“実情”「『命がけでとったクリ』を売る女性も」
NEWSポストセブン
(時事通信フォト)
文化勲章受章者を招く茶会が皇居宮殿で開催 天皇皇后両陛下は王貞治氏と野球の話題で交流、愛子さまと佳子さまは野沢雅子氏に興味津々 
女性セブン
各地でクマの被害が相次いでいる(右は2023年に秋田県でクマに襲われた男性)
「夫は体の原型がわからなくなるまで食い荒らされていた」空腹のヒグマが喰った夫、赤ん坊、雇い人…「異常に膨らんだ熊の胃から発見された内容物」
NEWSポストセブン
雅子さま(2025年10月28日、撮影/JMPA
【天皇陛下とトランプ大統領の会見の裏で…】一部の記者が大統領専用車『ビースト』と自撮り、アメリカ側激怒であわや外交問題 宮内庁と外務省の連携ミスを指摘する声も 
女性セブン
相次ぐクマ被害のために、映画ロケが中止に…(左/時事通信フォト、右/インスタグラムより)
《BE:FIRST脱退の三山凌輝》出演予定のクマ被害テーマ「ネトフリ」作品、“現状”を鑑みて撮影延期か…復帰作が大ピンチに
NEWSポストセブン
名古屋事件
【名古屋主婦殺害】長らく“未解決”として扱われてきた事件の大きな転機となった「丸刈り刑事」の登場 針を通すような緻密な捜査でたどり着いた「ソフトテニス部の名簿」 
女性セブン
今年の6月に不倫が報じられた錦織圭(AFP時事)
《世界ランキング急落》プロテニス・錦織圭、“下部大会”からの再出発する背景に不倫騒と選手生命の危機
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる(左/時事通信フォト)
《空腹でもないのに、ただただ人を襲い続けた》“モンスターベア”は捕獲して山へ帰してもまた戻ってくる…止めどない「熊害」の恐怖「顔面の半分を潰され、片目がボロり」
NEWSポストセブン
カニエの元妻で実業家のキム・カーダシアン(EPA=時事)
《金ピカパンツで空港に到着》カニエ・ウエストの妻が「ファッションを超える」アパレルブランド設立、現地報道は「元妻の“攻めすぎ下着”に勝負を挑む可能性」を示唆
NEWSポストセブン
大谷翔平と真美子さんの胸キュンワンシーンが話題に(共同通信社)
《真美子さんがウインク》大谷翔平が参加した優勝パレード、舞台裏でカメラマンが目撃していた「仲良し夫婦」のキュンキュンやりとり
NEWSポストセブン
兵庫県宝塚市で親族4人がボーガンで殺傷された事件の発生時、現場周辺は騒然とした(共同通信)
「子どもの頃は1人だった…」「嫌いなのは母」クロスボウ家族殺害の野津英滉被告(28)が心理検査で見せた“家族への執着”、被害者の弟に漏らした「悪かった」の言葉
NEWSポストセブン