芸能

吉行和子 42歳で映画『愛の亡霊』に出演して得た転機

女優・吉行和子が転機となった作品を語る

 映画史・時代劇研究家の春日太一氏がつづった週刊ポスト連載『役者は言葉でできている』。今回は、映画『家族はつらいよ2』で熟年離婚の危機を乗り越えた夫婦の妻を演じる吉行和子が、劇団民藝を辞めてアングラ系の芝居に加わり、42歳で大島渚監督の『愛の亡霊』出演に至るまでを語った言葉を紹介する。

 * * *
 吉行和子は1969年に劇団民藝を離れ、一転して唐十郎ら反体制のアングラ系の演劇人たちとの芝居に参加していく。

「民藝とまるで違うことを皆さんやっていました。観にいくと、凄く惹かれるものもありました。そんな時に早稲田小劇場の鈴木忠志さんから、唐十郎さんが書いた『少女仮面』という台本が送られてきて。その時に本当の扉が開いた気がしました。私の気持ちは止まらなくて、劇団に『辞めます』と言いました。そこから初めて、芝居が面白いと思えるようになったんです。

 劇団にいると、先輩たちから常に試験されているみたいなものですから、楽しいと思えることはありませんでした。一つ終わると何とかパスして、また次へ。民藝以外で何かするということを考えていませんでしたから、この劇団でちゃんとした役者にならなきゃということしか頭にありませんでした。いつも気持ちが窮屈だったんです。それが今度は何でもありの世界ですから。毎回刺激が凄かった。

 劇場もそうです。今までは大きい劇場できっちり稽古した芝居を観ていただく、というのがあったのですが、今度は劇場が小さい。それだけで興奮しちゃうんですよね。今までは『お客さんがじっと観ている。だから、ちゃんとやらなきゃ』みたいな、客席との隔たりを感じていたのが、近くで一緒にやっていると思えるようになりました。それに乗っかって、何か自分の力じゃないものも出ちゃうんです。お客さんと一緒に芝居を作る、そういう面白さがあると知りました。それで段々と『私はこんなに面白い仕事をやっている』と思えるようになったんです」

関連キーワード

関連記事

トピックス

大谷翔平がこだわる回転効率とは何か(時事通信フォト)
《メジャー自己最速164キロ記録》大谷翔平が重視する“回転効率”とは何か? 今永昇太や佐々木朗希とも違う“打ちにくい球”の正体 肩やヒジへの負担を懸念する声も
週刊ポスト
竹内朋香さん(27)と伊藤凛さん(26)は、ものの数分間のうちに刺殺されたとされている(飲食店紹介サイトより。現在は削除済み)
「ギャー!!と悲鳴が…」「血のついた黒い服の切れ端がたくさん…」常連客の山下市郎容疑者が“ククリナイフ”で深夜のバーを襲撃《浜松市ガールズバー店員刺殺》
NEWSポストセブン
和久井学被告と、当時25歳だった元キャバクラ店経営者の女性・Aさん
【新宿タワマン殺人・初公判】「オフ会でBBQ、2人でお台場デートにも…」和久井学被告の弁護人が主張した25歳被害女性の「振る舞い」
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(Instagramより)
《愛するネコは無事発見》遠野なぎこが明かしていた「冷房嫌い」 夏でもヒートテックで「眠っている間に脱水症状」も 【遺体の身元確認中】
NEWSポストセブン
『凡夫 寺島知裕。「BUBKA」を作った男』(清談社Publico)を執筆した作家・樋口毅宏氏
「元部下として本にした。それ自体が罪滅ぼしなんです」…雑誌『BUBKA』を生み出した男の「モラハラ・セクハラ」まみれの“負の爪痕”
NEWSポストセブン
ブラジルを公式訪問されている秋篠宮家の次女・佳子さま(2025年6月4日、撮影/JMPA)
「佳子さまは大学院で学位取得」とブラジル大手通信社が“学歴デマ報道”  宮内庁は「全報道への対応は困難。訂正は求めていません」と回答
NEWSポストセブン
米田
「元祖二刀流」の米田哲也氏が大谷翔平の打撃を「乗っているよな」と評す 缶チューハイ万引き逮捕後初告白で「巨人に移籍していれば投手本塁打数は歴代1位だった」と語る
NEWSポストセブン
花田優一が語った福田典子アナへの“熱い愛”
《福田典子アナへの“熱い愛”を直撃》花田優一が語った新恋人との生活と再婚の可能性「お互いのリズムで足並みを揃えながら、寄り添って進んでいこうと思います」
週刊ポスト
生成AIを用いた佳子さまの動画が拡散されている(時事通信フォト)
「佳子さまの水着姿」「佳子さまダンス」…拡散する生成AI“ディープフェイク”に宮内庁は「必要に応じて警察庁を始めとする関係省庁等と対応を行う」
NEWSポストセブン
まだ重要な問題が残されている(中居正広氏/時事通信フォト)
中居正広氏と被害女性Aさんの“事案後のメール”に「フジ幹部B氏」が繰り返し登場する動かぬ証拠 「業務の延長線上」だったのか、残された最後の問題
週刊ポスト
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《ブログが主な収入源…》女優・遠野なぎこ、レギュラー番組“全滅”で悩んでいた「金銭苦」、1週間前に公表した「診断結果」「薬の処方」
NEWSポストセブン
ホストクラブや風俗店、飲食店のネオン看板がひしめく新宿歌舞伎町(イメージ、時事通信フォト)
《「歌舞伎町弁護士」のもとにやって来た相談者は「女風」のセラピスト》3か月でホストを諦めた男性に声を掛けた「紫色の靴を履いた男」
NEWSポストセブン