◆10年後の最高指導者
その後、李は同省に2年足らず勤務しただけで、2015年12月には北京市に戻され、副市長として、首都北京の汚職取り締まりの最高責任者である市規律検査委書記に選出。
北京では習近平が最高指導者に就任した2012年末から2015年末まで3000人以上が反腐敗運動で逮捕されているが、李が同委書記に就任して半年で、これまでの1年分に当たる1000人を摘発するほどの辣腕をふるった。とくに、市高級幹部である部長レベル級幹部は247人に達しており、大物幹部の摘発が際立っている。
とりわけ、江沢民元主席に近いといわれていた呂錫文・北京市副書記は、李が北京市の同委書記就任直後の2016年1月、汚職容疑などで逮捕されている。習近平の意向を受けた李が腐敗問題への厳しい姿勢を市幹部らに見せつける狙いがあったとみられる。
李は北京市副市長を1年務めただけで、今年1月には現職である中央規律検査委副書記に抜擢された。
「李書磊は2014年から1、2年ごとに部長、次官級、さらに閣僚級と、ロケット並みのスピード出世を遂げている。これは習近平が李を自らの後継者として位置づけ、最高指導部入りさせる思惑があるからだ。このままいけば、李は『習近平後継』として10年後の中国の最高指導者に就任する可能性が高い」
と前出の中国筋は指摘する。それにしても、なぜ「10年後」なのか。それは、習近平が今年秋の党大会で打ち出す「党主席制」の導入が深く関係している。
すでに今年2月号の本誌・SAPIOで、「総統制」という名称ながら、実質的な党の抜本的な組織改革である「党主席制」の創設を報じているが、改めて論じてみたい。