同筋によると、改革案は李が発案し、習近平の最側近の一人でもある栗戦書・党中央弁公庁主任のスタッフが作成した。党の最高ポストとして「中央委員会主席」(党主席)を創設し、その下に実質的なナンバー2である副主席ポスト(複数)を置く。重要事項は主席と副主席が協議して決定するが、主席の意見が優先され、党主席の権限が極めて強くなる。

「党政治局」や党政治局員を兼務する現在の最高指導部である「政治局常務委員会」という組織は残るが、無力化されるだけに、権力が主席に集中することは明らかだ。

 それでは、いままで党の最高ポストだった党総書記はどうなるのかというと、名称だけは残る。党政治局の事務局部門である書記処のトップが総書記となり、主席が決定した重要事項を各担当部門に伝達、実行させる権限をもつ。

 これらの改革によって、これまでの定年は廃止され、任期も明記されないが、党主席は原則的に国家主席も兼ねるため、国家主席の任期である2期10年が党主席の任期のめどとなる。

 いまのところ、主席には習近平が、副主席には李克強首相、さらにもう一人の副主席には王岐山が就くとみられる。ただ、その場合、王が首相に就任し、李は全国人民代表大会(全人代=国会)常務委員長に転じるか、あるいは李が首相を続投すれば、王が全人代委員長に転じる可能性もあるという。

「習近平が10年間、党主席を務めた後を襲うのは、年齢的に閣僚級のなかでも最も若い幹部の一人で、習近平の評価が高い李書磊を置いて他にはいない。すでに、水面下では、『ポスト習近平』を見据えた動きが出ているのだ。それは同時に『習近平院政』の布石でもある」と同筋は指摘する。

 すでに習近平は10年後の院政まで見据えているのだ。

【PROFILE】相馬勝/1996年生まれ。東京外国語大学中国語学科卒業。産経新聞外信部記者、香港支局長、米ハーバード大学でニーマン特別ジャーナリズム研究員等を経て、2010年に退社し、フリーに。『中国共産党に消された人々』、「茅沢勤」のペンネームで『習近平の正体』(いずれも小学館刊)など著書多数。近著に『習近平の「反日」作戦』(小学館刊)。

※SAPIO2017年6月号

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