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都営地下鉄の細かすぎるPR戦略 「音鉄」向けレア音源も

2011年に運行された都電荒川線の花電車。住民やファンが、線路沿いに多く詰めかけた


「東京都交通局は、都営地下鉄、都バス、都電・日暮里・舎人ライナーを運行しています。また、上野動物園内を走るモノレールは、動物園のアトラクションではありません。交通局が運行している、れっきとした鉄道事業です。そのほか、交通局という名前からバスや鉄道を運行しているだけの部署と思われがちですが、もともと交通局は電気局という部署がルーツです。そのため、現在も水力発電施設を有し、電力事業もおこなっています。“PROJECT TOEI”は都民でも知らない電力事業のように、交通局の仕事をもっと知ってもらうことを意識して制作しています」

 その“PROJECT TOEI”で注目のコンテンツといえるのが、長期シリーズ化している“Sound of Toei”だ。文字通り交通局内で耳にする“音”をアップしている。

 鉄道には、さまざまな楽しみ方がある。乗ることが好きな”乗り鉄”、撮るのが好きな”撮り鉄”、模型が好きな“模型鉄”、記念グッズや切符などをコレクションする収集鉄など、楽しみ方によって派閥分けがされている。

 その中には、鉄道の音を楽しむ“音鉄”という派閥もある。”音鉄”は駅ホームなどで列車の走行音や汽笛、接近メロディ・駅メロディなどを録音して楽しむ鉄道ファンを指す。今般、女子にも増えている乗り鉄、特別な列車が運行されるたびにあちこちで見かける撮り鉄に比べると、音鉄は少数派。

 そんな数少ない音鉄に向けたと思われる“Sound of Toei”にアップされている音は、スマホの着信音用にダウンロードできる。マニアでなくても、自宅や会社の最寄駅の車内放送や駅アナウンスを着信音用にダウンロードしたいという需要はそれなりにあるだろう。

 ところが“Sound of Toei”にアップされているのは、“都バスのニーリング音”や“大江戸線の音声誘導チャイム”といったマニアックなものばかり。通常では録ることが難しい“保線作業音”や“レール研磨音”などもアップされている。

 極めつけは、“都電荒川線「7000形走行音」”。都電7000形は吊り掛け駆動式モーターを搭載しており、特徴的なブーンという音がアップされている。この音を聞き分けられるのは、相当なマニアだけだろう。

 逆に割と一般的と思われる発車メロディや駅アナウンスは見当たらない。音鉄にとって“Sound of Toei”は夢のようなコンテンツといえるが、幅広く都民が楽しめるとは言い難い。

 東京都交通局は「“PROJECT TOEI”は、特にマニアを狙って制作しているわけではありません。これまでに取り込めなかった新たな層に訴求できるコンテンツとして考えた結果です」と言うが、ここまでマニアックに徹した“PROJECT TOEI”からは、逆に東京都交通局の意気込みを感じてしまう。だが、残念なことに“PROJECT TOEI”のPVはあまり伸びていない。

“攻め”の姿勢に転じた東京都交通局の挑戦が、実を結ぶのはこれからなのかもしれない。さらなる“攻め”企画で、新たな境地が切り開かれることを期待したい。

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