興味深いのは、ちゃんこ屋のランキングが必ずしも店主・代表の現役時代の番付や人気と比例していないことだ。現役引退後、東京・江戸川区で「ちゃんこ板井」を開いた経験のある板井圭介氏(元小結・板井)はこういう。
「現役時代の番付とちゃんこ屋の人気は別物ですよ。有名力士は化粧まわしを飾ったりして客寄せにできる部分はあるが、出世したぶん部屋でちゃんこ番なんてやったことがないから、味付けを考えたりできないわけです」
元力士としての看板だけでは、店は繁盛しないのだという。板井氏が続ける。
「ちゃんこ屋経営で難しいのは、夏場に客足が落ちること。冷やしちゃんこであるとか限定メニューを考えたが、私の店では見向きもされなかった。立地も微妙で、両国界隈だと東京開催場所中は繁盛するが、1月、5月、9月の年3か月で1年分を稼ぐぐらい売り上げないと厳しい」
両国界隈では8位に「ちゃんこ霧島」がランクイン。「この店は経営する陸奥親方(元大関・霧島)の部屋の向かいにある。部屋で稽古を見てくれたお客さんたちに“ちゃんこは向かいのお店で”といったかたちで声がかけられる。巧みなビジネスの仕組みになっています」(同前)
各店舗が様々な工夫を凝らして、現役引退後もガチンコで勝負しているのだ。
撮影■渡辺利博
※週刊ポスト2017年5月26日号