「お墓にもっと選択肢があってもいいんじゃないかと思うようになったんですね。家族でお花見のピクニックに行けるようなお墓とか」
葬儀社を辞め、森林ボランティアなどの活動をし、樹木葬実現への道を模索していたとき、偶然にも同じ思いを持つ、ここ延寿院の住職(51才)と知り合った。延寿院は、利用していない1ヘクタールの里山を所有していた。「2012年に、住職と一緒にNPOを作った」のだという。
NPO法人の名を「ロータスプロジェクト」という。コンセプトは「お寺を地域に開かれた交流の場に」。住職が執事長を兼務する新宿の大きなお寺でフリーマーケットを開いたり、農業体験会を開催したりすると共に、里山保全と樹木葬に取り組むことになった。
「アズマザサが繁茂し、ヒノキやクヌギの木々が密集していた里山を切り拓きました。木々の間に隠れて見えなかったヤマツツジが姿を現し、絶滅危惧類のキンラン、ギンランも咲き…」とは、先般聞いた一関の樹木葬墓地の歩みと瓜二つだ。だが、ここはNPOの運営。「違いは宗教色をできるだけ排除していること」と白石さんは言う。
◆故人へのリスペクトを込めて骨壺に
2011年に利用が始まったという樹木葬墓地は、建物の裏手にあった。数本のソメイヨシノと1本のシダレザクラが植わった20~30m四方ほどの広場2つが、低い木と縄のフェンスで囲まれている。桜の花の季節は過ぎているが、周囲の雑木林と相まって、風にそよぐ新緑が美しい。
「故人1人に1本ずつ植えるのではなく、シンボルツリーの足元に埋葬する形です」
桜の木々が「シンボルツリー」なのだ。地面に60cm×80cmの升目に縄が這っていて、それが1区画。ところどころに、40cmほどの木柱が置かれている。
「木柱を倒して置いているのは仮契約、下部を埋めているのは契約済みの区画。希望されると、木柱にお名前を書きます」と白石さん。よく見れば、地面に5cmほどの擬宝珠のような木の突起物も点在する。
「骨壷の上の部分です」
遺骨は粉にして、スギ材で作ったオリジナルの骨壷に入れて埋葬する。蓋が五輪塔を模した形で、五輪塔の上の擬宝珠風の部分が土の上に出るように埋葬しているそうだ。
「土に還るには、骨を直接埋葬する方が早いでしょうが、故人へのリスペクトを込めて骨壷に入れることにしました。スギ材の骨壷ごと、おそらく5年から10年で土に還ります」
埋葬区画が名前を書いた木柱で確認でき、五輪塔上部の突起で埋葬のピンポイントが正確に特定できる仕組みなのだ。それで、お値段は?
「1区画にお1人なら50万円。2人なら65万円。あと、管理費や粉骨料などに、お1人なら17万円、2人なら12万円ずつをいただきます」