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2017.06.11 16:00  女性セブン

生鮮食料品入手困難な「食の砂漠地帯」 移動販売車に密着

買い物難民となった集落の住人のために町内を回る星野さん


「2000年に成立したこの法律は、いわば大型スーパーの出店を事実上無制限に許すものでした。地方都市に大型店が続々と進出し、それまで地域住民が頼った商店街がシャッター通りになり、地元スーパーがどんどんつぶれていった。

 その後、大型店同士の競争が激化すると、今度は負けた大型店の撤退が相次いでフードデザートが拡大した。結果、交通手段を持たない高齢者が食の砂漠に取り残されて“難民化”したんです」

 農水省の推定によれば、現在、家から500m内に商店がない買い物難民は全国に約850万人。高齢化と共にその数は増え続け、2030年までに1000万人を超えると予想される。フードデザートは地方のみならず都心にも広がっている。

 一例が東京・板橋区の高島平団地。総戸数1万戸、国内最大規模の団地は今、65才以上の高齢者比率が4割を超えた。大型スーパーに顧客を奪われ、近くの個人商店が続々閉店。車がなく足腰の弱い高齢者が買い物難民と化し、区も解決策に苦慮している。

 東京のど真ん中、新宿区でさえこの問題から逃れられない。現在、同区の高齢者の独居率は45%超。体の不自由な独居老人がスーパーに行けず、栄養失調にあえいでいる。列島を襲う“食の砂漠化”を直視するため、本誌は5月末のある週末、先述の山梨県市川三郷町で星野商店の「移動販売」に密着した。

「父の代からまぐろの刺身を売りにして小さな商店を営んでいたけど、高齢化で町の人口が減少して売り上げが落ちました。それで“攻めの商売”として3年前から移動販売を始めたんです。もちろん、地域のために役立ちたいという気持ちも強かったです」

 そう話す星野さんは、耳にピアス、サイドを刈り上げた髪形にあごひげという今風の若者。物腰は柔らかく、笑顔が清々しい。

 一日の作業開始は朝7時。両親とともに、移動販売用の軽トラックの冷蔵庫に食料品を詰め込む。品数は計500品目超。詰め終わる頃には11時半を回る。助手席に小型のレジを置いて、出発進行。車の屋根に据え付けたスピーカーが陽気な歌を奏でるなか、深い緑に囲まれた山あいの細い道を縫うように走る。

 同地域は標高1600mの山々を見上げる場所にあり、山の裾野に続く斜面にへばりつくように集落が点在する。

 かつては養蚕業で栄えたが現在は廃れ、蚕を飼う家はほとんどない。最初に向かったのは同町大塚地区。林泉寺という古刹を中心にした集落で、漆喰がはがれ落ちて土壁があらわになった家が目立つ。

 広場に車を止めると、ぱらぱらと住民が集まってきた。「全員が常連さん」(星野さん)という顔なじみで、彼を囲んで楽しそうにおしゃべりをする。

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