そんな五木から感じるのは、歌手の域を越えたエンターテイナーとしての魅力。その原点はステージショーの聖地・ラスベガスにあった。
「1976年から3年間、日本人歌手として初めてラスベガスでショーをする機会に恵まれ、エルビス・プレスリーと同じステージに立ちました。日本の演歌歌手だった28歳の僕は、歌うだけではない世界トップスターのエンターテインメントを目の当たりにして、言葉にならないほど勉強になりました」
以来、歌舞伎、ミュージカル、洋楽のコンサートなど、ジャンルを問わず幅広く足を運び、良いと思ったものは積極的に取り入れ、「和」と「洋」の独自の世界を確立。日本舞踊を舞い着物姿で歌うステージもあれば、テンポのいい曲でダンサーと歌うこともある。
演出、曲目も含めたコンサートや舞台のプロデュースは、すべて五木自らが行なう。そのため、日本舞踊やダンスの習得はもちろん、琴、三味線、ドラム、サックスなど20種類以上の楽器を演奏できるようになった。
「ステージに取り入れるには勉強しなければいけませんからね。ギターは元々弾けましたが、三味線やドラム、サックスなどは20代後半から30代にかけてやり始め、今では僕の大きな財産になっています。さすがにこれから始めるのは大変ですから(笑い)」
次々と新曲をリリースし、歌番組やコンサートに出演して多忙を極める五木。どこにそんな時間があるのかと思うが、「時間が限られている時のほうが集中できるんです」とさらりと言う。