アクセス至便の立地ながら、土地代も墓石代もかからないので価格帯は80万~100万円が主流だ。2013年にオープンした安養院ひかり陵苑(東京・品川区)の広報担当者が説明する。
「購入する方は大きく3パターンに分けられます。田舎のお墓をたたんだ場合、配偶者に先立たれた場合、そして生前墓として自分の墓を購入する場合の3パターンです。当施設は『永代供養墓』で、“お墓の面倒を見る人がいなくなっても誰にも迷惑をかけない”というのも購入動機になっていると思います」
また、「自宅を引っ越す際も、墓石がないので解約しやすい」(早稲田納骨堂・広報担当者)といった反応もあり都市部に暮らす中高年層のニーズに合致している。
だが、こうしたマンション霊園に「値上げラッシュ危機」が迫っているという。発端は、東京・赤坂の一等地に建つ「赤坂浄苑」に下されたある判決だ。
地上5階建てで約3700基を収容できる赤坂浄苑が完成したのは2013年のこと。宗教法人の場合、宗教行為に関わる事業の法人税、施設の固定資産税などが非課税になる。しかし、2015年に東京都は赤坂浄苑を運営する寺院・伝燈院に対し、「建物が本来の宗教目的で専ら使用されていない」として、固定資産税などの支払いを求めたのである。
ポイントは施設が「宗教不問」を謳っていたことだった。“どんな信仰の人でも墓が買える”となれば、もはやそれは宗教施設ではない──そんなロジックで当局が課税を考えたわけだ。「販売業務を民間企業に委託していたことも“宗教ではなくビジネス”と指摘される要因となった」(寺院関係者)とされる。