「私も、当然そのお墓に入ると思われているんでしょうが、義父母とは前々からウマが合わない。死んでまで一緒なのは嫌なんです」
息子に打ち明けると、「面倒くさい人だなあ」と言いながらもネット検索してくれ、「ここ、良さそうだよ」とスノードロップを見つけてくれた。
「で、見に行ったら、景色が最高でしょ。手放しで気に入り、しかも女性専用のお墓が、2か月間生活費を切り詰めたら捻出できる10万円弱であるなんて。飛びついて、契約しました」
それは夫さんも了解済みなんですか?
「スノードロップさんには『後でトラブったらいけないから、契約は家族の承諾を得てからにしてください』と口すっぱく言われたんですが、私は自己責任で、夫に内緒で買いました。あ~これでいつでも死ねる。カモミールの下に眠ると思うと、いずれ死ぬことが怖くなくなった。今、夫に伝えるタイミングを計っているところです」
岸さんも女子校育ちで、元保育士だそうだ。静岡県に住む峰田恭子さん(64才・仮名)と、若き日の経歴が重なるのは、偶然でないのかも。そんな気がした。
とすると、女性専用のお墓を潜在的に好む人たちは、もしかすると多いのだろうか。もっとも、我が身を振り返ると、私がその昔通った短大も“女子ワールド”だったが、だからといって女性環境への特段の希望はない。気が合う、合わないは、性差より個人差だと思う。でも、満員電車に乗るとき、女性専用車両があればほっとするのは確かだ…なんてことも考える。
文・写真/井上理津子(ノンフィクションライター)
※女性セブン2017年6月29日・7月6日号