小笠原:気によって笑顔になったり、長生きしたり短命になったりします。どんな病気になっても、障害があっても、気がしっかりしていると、いい人生が送れます。
室井:これも読んでいて不思議だったのですが、患者さんが亡くなった時、ご遺体の前で、ご家族、先生、ケアしてきたかたがたが、笑顔でピースサインをしている写真が、本の中に何枚も出てきます。
小笠原:どう思われましたか?
室井:私は大学生の時に父を亡くして、京都のお寺で納骨する時、泣いているのに親戚のおばさんから記念写真を撮ると言われてムッとしたことがあります。この本に出てくる写真は、それとは全然違いますね。
小笠原:患者さんが亡くなられた時は、そのお宅に行ってご家族に最期の様子を聞きます。あなたがたが一生懸命に看病したから、こうして家で穏やかに最期を迎えられた、よかったですね、という話をして、そろそろお別れをしましょうかと言って合掌する。すると、ほとんどのご家族は笑顔になります。
室井:患者さんの心の在り方、家族の気持ち、介護をされたみなさんの気持ちがひとつになって、これで終わったという満足感があるから、写真を撮ろうと思えるんですね。
小笠原:涙を流しながらも、よかった、よかったとおっしゃって、みんな「笑顔でピース」になるんですよ。
室井:この本を読んで、自分はひとりで生きているわけじゃなくて、生かされているんだな、と改めて思いました。
小笠原:生かされているいのちに気がついた人は、不思議なくらい長生きしますし、最期まで朗らかに過ごすことができますよ。
室井:だからこそ、まだ元気なうちに漠然とでも、自分の最期について考えておいたり、楽しいことを見つけておかないとダメですね。
小笠原:それがいちばん大事ですね。ところで、題名にもつけた「ご臨終」ってどういう意味だと思われますか? 死ぬことだと思います?
室井:魂がまた別のところに…。
小笠原:「ご臨終」とは「終わりに臨む」、つまり生きている時、死を見つめた瞬間からだと思っているんです。それが1年であろうと2年であろうと、たとえ1か月、1日前であろうと、死を見据えて、自分がやりたいことをやり尽くすことができれば、それは「なんとめでたいご臨終」だと思います。
室井:若い人も、お年寄りも、介護している人も、どうしようか迷っている人も、この本を読むと勇気がわいてくると思います。在宅ケアのバイブルになっていくのではないでしょうか。私も心が暖かくなって、覚悟ができて、元気になれました。ぜひ、たくさんの人に読んでいただきたいですね。
※小笠原文雄先生が7月17日、「なんとめでたいご臨終の迎え方」をテーマに、東京・小学館で講演会を開催。
詳細はhttps://sho-cul.comへ。
撮影/横田紋子
※女性セブン2017年7月13日号