力山という力士を名鑑で見て、東京都中央区出身とは優雅だな、と思っていたら、荒汐親方の息子さんだった。そして蒼国来。ブヨブヨと無駄な肉のついた力士がいないことが、この部屋の特徴に見えた。
元小結・大豊の荒汐親方は現役時代、師匠の時津風親方(大関・豊山)から「腹の出方だけは横綱級だな」とからかわれていたが、経験から、体重と相撲の強さは必ずしも比例しないと思っておられるのかもしれない。ビッチリと筋肉のついた剛士には、同じく筋肉質ではあるが一周り細い兄、大波がいる。果敢な相撲を幕下で続ける二人の出世争いを楽しみにしていた。
そこにこの度、三男が東洋大学から入門。毛利元就の「三本の矢」の息子達に由来して、長男若隆元、次男若元春、三男若隆景と改名した。若隆景は三段目付け出しデビューの五月場所、七戦全勝で優勝。荒汐親方は若隆景を「相撲のセンスは三兄弟で一番かもしれない」と言う。若隆景を発奮材料として二人もがんばれ、ということであろう。たのもしいわ、と目を細めた直後、何か忘れてはいないか? と自問する。
荒汐部屋といえば、すでに幕下五枚目を経験した福轟力(ふくごうりき)や、本名でジャスパーケネスと呼ぶと楽しい気分になれる荒篤山(こうとくざん)など、有望な兄弟子達がいるではないか。若隆景には彼らを追い抜いてしまいそうな勢いがある。「ええい! 早くみんな十両に上がってよ!」と叫びたくなる。