ライフ

名字が生まれた農村風景が丸わかり、室町時代の集落を図解

多くの名字が生まれたと推測される室町時代の集落イメージ

 NHK『人名探究バラエティー 日本人のおなまえっ!』に出演する姓氏研究家の森岡浩氏が近著『名字でわかる あなたのルーツ』で日本人の名字がどのように生まれたか解説している。名字が生まれた中世から近世にかけて人口の9割を占めたのは農民であり、農村の風景には名字のルーツが詰まっている。

 別掲のイラストは、多くの名字が生まれたと推測される室町時代の集落だ。「山」に囲まれた「谷」で「川」や「池」を利用して「田」を作り、「稲」を育て、「米」を収穫した。どこにでもある里山の風景がさまざまな名字を生み、上記のような文字がよく使われた。水田にしにくいところは「畑・畠」にした。「畠」の字を分解して「白田」ともいった。

 田んぼの境界線を「くろ」といい、「畔」という漢字をあてた。この場所に柳の木を植えたのが「畔柳」で、のちに「黒柳」に変化した。

 山の中腹まで開墾し、そこに住んだのが「山中」や「山内」。麓には道が通り、「山下」には家が並ぶ。山の麓は薪(まき)を取るのに便利なうえ水も得やすく、当時の人には住みやすい場所だった。この場所は「山本」「山元」でもある。中国地方に多い「山根」も同じ。

 山の稜線の張り出した所は「山崎」で、神社があれば「宮崎」、寺があれば「寺崎」だ。この「崎」が直接海に落ち込んでいるところは「うみ」の「さき」で「みさき」といい、「岬」や「三崎」と書いた。

 道が山を越える一番高いところは「峠」である。中国地方では「たお」といい「田尾」や「垰」と書いた。鳥が山を越える場所も決まっており、そこを「鳥越」という。また、半島で陸地の幅の狭いところを船を曳いてショートカットしたところが「舟越・船越」である。

 道が交差するところは「辻」で、「三」のつく日に市が立てば「三日市」、「五」のつく日に立てば「五日市」という。

 江戸時代には農民の集落を「村」、商人の集落を「町」といった。漁村は「浦」とも呼ばれ、「村」は「郷」といわれることもあった。リアス式海岸が続く長崎県では、「浦」「浦川」「浦田」「大浦」「松浦」「田浦」など、「浦」のつく名字が多い。

イラスト■スズキサトル

※森岡浩・著『名字でわかる あなたのルーツ』より

関連キーワード

関連記事

トピックス

今季のナ・リーグ最優秀選手(MVP)に満票で選出され史上初の快挙を成し遂げた大谷翔平、妻の真美子さん(時事通信フォト)
《なぜ真美子さんにキスしないのか》大谷翔平、MVP受賞の瞬間に見せた動きに海外ファンが違和感を持つ理由【海外メディアが指摘】
NEWSポストセブン
国仲涼子が語る“46歳の現在地”とは
【朝ドラ『ちゅらさん』から24年】国仲涼子が語る“46歳の現在地”「しわだって、それは増えます」 肩肘張らない考え方ができる転機になった子育てと出会い
NEWSポストセブン
柄本時生と前妻・入来茉里(左/公式YouTubeチャンネルより、右/Instagramより)
《さとうほなみと再婚》前妻・入来茉里は離婚後に卵子凍結を公表…柄本時生の活躍の裏で抱えていた“複雑な感情” 久々のグラビア挑戦の背景
NEWSポストセブン
インフルエンサーの景井ひなが愛犬を巡り裁判トラブルを抱えていた(Instagramより)
《「愛犬・もち太くん」はどっちの子?》フォロワー1000万人TikToker 景井ひなが”元同居人“と“裁判トラブル”、法廷では「毎日モラハラを受けた」という主張も
NEWSポストセブン
兵庫県知事選挙が告示され、第一声を上げる政治団体「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志氏。2024年10月31日(時事通信フォト)
NHK党・立花孝志容疑者、14年前”無名”の取材者として会見に姿を見せていた「変わった人が来るらしい」と噂に マイクを持って語ったこと
NEWSポストセブン
千葉ロッテの新監督に就任したサブロー氏(時事通信フォト)
ロッテ新監督・サブロー氏を支える『1ヶ月1万円生活』で脚光浴びた元アイドル妻の“茶髪美白”の現在
NEWSポストセブン
ロサンゼルスから帰国したKing&Princeの永瀬廉
《寒いのに素足にサンダルで…》キンプリ・永瀬廉、“全身ブラック”姿で羽田空港に降り立ち周囲騒然【紅白出場へ】
NEWSポストセブン
騒動から約2ヶ月が経過
《「もう二度と行かねえ」投稿から2ヶ月》埼玉県の人気ラーメン店が“炎上”…店主が明かした投稿者A氏への“本音”と現在「客足は変わっていません」
NEWSポストセブン
自宅前には花が手向けられていた(本人のインスタグラムより)
「『子どもは旦那さんに任せましょう』と警察から言われたと…」車椅子インフルエンサー・鈴木沙月容疑者の知人が明かした「犯行前日のSOS」とは《親権めぐり0歳児刺殺》
NEWSポストセブン
10月31日、イベントに参加していた小栗旬
深夜の港区に“とんでもないヒゲの山田孝之”が…イベント打ち上げで小栗旬、三浦翔平らに囲まれた意外な「最年少女性」の存在《「赤西軍団」の一部が集結》
NEWSポストセブン
スシローで起きたある配信者の迷惑行為が問題視されている(HP/読者提供)
《全身タトゥー男がガリ直食い》迷惑配信でスシローに警察が出動 運営元は「警察にご相談したことも事実です」
NEWSポストセブン
「武蔵陵墓地」を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月10日、JMPA)
《初の外国公式訪問を報告》愛子さまの参拝スタイルは美智子さまから“受け継がれた”エレガントなケープデザイン スタンドカラーでシャープな印象に
NEWSポストセブン