中国で臓器移植を受けた人へのアンケート結果
外国人の渡航移植を厳しく制限する欧州でもベラルーシ、ウクライナ、モルドバなど貧しい国で違法な臓器移植が行われる。やはり主要はネットを介した売買で、肺25万ドル(約2750万円)、腎臓4万ドル(約440万円)などで取り引きされている。
日本人と最もかかわりがあるのが中国だ。中国も外国人への臓器移植を表向きは禁止したが、アジアの移植ツーリズムに詳しい岡山商科大学法学部長の粟屋剛教授が解説する。
「中国では移植は以前から一大産業になっている。私が現地を訪問した際も様々な国の患者がいた。日本人も民間の移植支援業者を通じるなどして移植手術を受けている」
粟屋教授は中国で移植手術を行った日本人66人にアンケートを実施。
対象は50~60代の男性が約7割を占め、大半が腎臓の移植だった。手術費用は500万~1500万円が半数以上で、業者への仲介料は100万~1000万円が6割を占めた。手術費用1500万円以上、仲介料1000万円以上を支払った患者もそれぞれ3割ほどいた。
中国での移植には課題も多いと粟屋教授が続ける。
「中国の移植臓器の多くは死刑囚や囚われた法輪功学習者から摘出されたものとされ、人権団体などが国際的に問題視している。渡航移植患者の帰国後の診察を拒む国内の病院が多いことも問題だ。それは医師ないし病院の応招義務違反(※注)ではないか」
※注/医師法により、医師は患者の求めがあった場合には正当な事由がなければ診察・治療を拒んではならないことが定められている。これを応招義務と呼ぶ。
いくら法的に規制されても、カネ次第で臓器が得られる状況に変わりはない。同アンケートでは「(中国で)手術したことを後ろめたく思うか」との質問に、「強く思った」と答えた人は0%、「少し思った」が20%、「思わなかった」が80%いた。
「日本は皆保険制度なので意識されにくいが、“医療の沙汰も金次第”であることは世界の常識。アジアの貧しい人々はそもそも医療にありつけない。渡航移植の良し悪しを論じる前に、この厳しい現実を直視する必要がある」(粟屋教授)
世界中、富を持つ者が移植にたどりつける現実があるのだ。
※SAPIO2017年8月号